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 作家馬場卓也のおもちゃと怪獣と仕事の三つ巴生活!  男もつらいし、女もつらい。男と女はなおつらい! てな訳でよろしく
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 もはや『ギャバンパンデミック!』という冗談が通じないほどに世界中がコロナに侵されて、日々まるで好転せず、闇の中を手探りで歩いてる状態に世界中が陥っております。生まれて初めて経験する世界的な危機。レジャー施設休館やイベントの自粛、新作映画も公開延期、映画館も休館や感染措置対応でぎこちなくなってる。それでも働きに出て、映画を見て……という日常を繰り返すしかない。もちろん、感染予防をしっかりとして。

 そんな中、次男が高校入試を終えたので『ジョジョ・ラビット』が見たいとのこと。1月に公開した映画だから、すでに上映終了、かと思いきや、偶然にも奈良県で上映中だった。二度目だがおもろい。戦争を、ナチスの愚行を痛烈に笑い飛ばした上で子供の視点から見た、見えないところで起こっている残酷さも描いている。とはいえ、冒頭でのテンションの高いはしゃぎっぷりとばかばかしさは最後までキープ。ついつい劇中人物に合わせて体をゆすって踊りたくなる映画。一応戦争映画なんだけど。

 そして次男とだらだら過ごす日々。今月はイベント多いし年度末なんで有給とってたけど、ほとんどコロナのせいで中止になってしまった。学校も春休みまで休みという、ただの臨時長期休暇に。

 今月ウルトラマンダイナに続いての大きなイベントだった平成ガメラ降臨祭も延期。これは仕方ないこと、というかいま世界中が『仕方ない』に包まれてるので仕方ない。

 しかし、ガメラ降臨祭の前に行われる超大怪獣2020は通常通り上映されることに。今月は『戦国自衛隊』。角川映画である。怪獣も出ないし特撮もほんの少ししかないけど、これはこれでSF大作、意表を突くラインナップだ。

 演習中の自衛隊が戦国時代にタイムスリップ、そこで意気投合した武将と天下統一を目指す、という荒唐無稽な話である。いや、荒唐無稽だからいいのだ。騎馬兵と戦車、ヘリが同一画面に収まる異様なかっこよさ。淡々とした原作と違い、映画では自衛隊員一人一人の心情にスポットを当てた青春映画のテイスト。だから無駄、と思うカットやシーンも少なくない。でもそれが当時の日本映画、角川映画のやり方なのだな、と思う。単なる痛快な映画に終わらせず、どこかしんみりとした印象を見る者に与えてしまう。クライマックスの川中島の合戦で勝ったのは自衛隊ではなく、千葉真一だったんだ、と再確認。

 
 上映前にはいつもより長めの前説で注意喚起。今、これが必要であり、大事なのだ。
 その翌日も再び京都へ。


 『T-34レジェンドオブウォー・ダイナミック完全版』を見る。奇しくも裏では『戦国自衛隊』上映中で、戦車映画が並んだことになる。前々から評判の映画で、中毒者続出、みなみ会館では一晩これしか流さないオールナイトを敢行(その日は裏のコルブッチナイトを見ていた)するほどである。ロシア発の戦車映画がなぜそこまで人を惹きつけるのか、『内臓千切れろ』とは? キャベツの重要性は? 
 物語は第二次大戦のドイツ。ソ連軍捕虜を使って戦車の演習を行おうとするものの、捕虜たちは戦車を奪って逃走、ドイツ軍との追跡とバトルが始まるのだった。T34とは主人公たちが乗りこむソ連の戦車の名称。冒頭の長い時間を使ってのドイツⅢ型戦車とT34の一対一のバトルで、その性能を見せつけ、後半はその後継機を奪取して主人公たちが逃げる。ガンダムMARKⅡからZガンダムに乗り換えたようなものか。戦車による逃走劇というシンプルなないように、CGを駆使した外連味たっぷりの戦車対決。まるで戦車たちも俳優の一人であるかのように動き回る。このばかばかしい派手さこそ魅力なのだな、と確信。少数で大軍勢を向こうに回すのも、敵中突破ものも見るものを熱くさせる。
 
 ラストは因縁のライバルとのタイマン対決というのも実にシンプル。この時逃げていたソ連軍はのちにドイツに攻め込むんだな、と数日前に見た『ジョジョ・ラビット』をおもいだす。


 ちなみに『内臓千切れろ』は主人公がライバルにはなった台詞(ロシア語とドイツ語で、会話は通じないのもリアル)。キャベツは逃走中の主人公たちが奪った食糧。よくそれをピックアップしてオールナイトの目玉にしたな、みなみ会館。帰りにキャベツ多めのパスタを食べる
 61式が足軽を蹴散らし、T34がドイツの市街地を爆走する、戦車まみれの週末だった。Tシャツ買えばよかった。

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 前回の『ミッドサマー』から約一週間。あれから新型コロナウィルスの被害は衰えることを知らず、小中学校の全国一斉休校、各種イベントスポーツの中止、延期、自粛等々に加え、マスクのみならずなぜかトイレットペーパーの買い占めが起こるなど、昔のオイルショックの騒動のような、まるでパニック映画のような日々を生きているのであります。
 こちらも先週末開催予定のウルトラマンダイナ京都&大阪に、学校行事が次々と中止や延期に。わかっていたこととはいえ、やっぱり悔しい。これらのために休みをとっていたので、ポカンと時間が空いてしまったのです。不要不急の外出は控えるように、と言われているので、3月のみなみ会館『戦国自衛隊』にガメラ降臨祭の原稿書かないと、確定申告行かないと、と思ったのですが、こんな時だからこそ、映画館へ。


 雨の降る中、『劇場版騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー/魔進戦隊キラメイジャーエピソードZERO・スーパー戦隊MOVIEパーティー』へ。タイトル長い。どこで切っていいのかわからないけど、VSとキラメイの2本立て、ということなのです。まずは『VS』、先日終了したリュウソウジャーのメンバーがルパンレンジャー、パトレンジャーと合流、共通の強敵に立ち向かう、という『ゴレンジャーVSジャッカー』以来の伝統パターン。ヒーローの競演、共闘は国、ジャンルを超えて熱く燃えるものであります。今回はリュウソウジャーの敵である、上司に恵まれない中間管理職・クレオンが自分の生き方を見つけるために上司に見つからない隠れ家を探すところから始まる。いい感じの洞窟を見つけたのはいいけど、そこには『ルパパト』の敵組織ギャングラーの怪人が閉じ込められていた。長いもの、強いものには巻かれるタイプのクレオンはもちろん、ギャングラー側について悪事を働く。これは戦隊競演映画、というよりもクレオンの処世術を見るような映画でした。クライマックス、いよいよ観客の興奮のボルテージが上がる三大戦隊共闘の大乱戦の最中、クレオンはさっさとギャングラーを見捨てて逃げてしまう、そうでないと。観客に近い目線で、暴言を吐いては悪事を働き、状況が不利となるや逃げていく、そんなクレオンに『不良番長』シリーズの山城新伍がダブって見えた、たぶん。


 続く『キラメイジャー』は来週放送の1話に先駆けての第0話。自国を侵略者に乗っ取られた宇宙青地蔵女ことマブシーナが、地球で共に戦う戦士、キラメイジャーを探すお話で、まず4人がそろう。4人ともマブシーナのスカウトにあっさり乗っかる。まるで昭和の戦隊を見ているようにあっさりと許諾し、さっさと変身して戦う。4人とも本職を持っているのが今回の特徴、そしてテレビ本編でレッドをスカウトする流れになる、と思う。そして最後のおまけとして、戦隊+プリキュアのダンス。実写とアニメの融合である。自分よりも先に放送されたプリキュアにはきちんと『先輩』扱いするスーパー戦隊魂。なぜこのオマケ? 兄ちゃんや弟、あるいは父親と付き添って戦隊を見に来た女児へのサービスか、そして春のプリキュア映画の前振りなのか。実際本編終了後にプリキュア映画の予告流れたけど、ドラえもんはじめ続々と春の子供映画の公開延期が決定しているので、これもまた……。そういえばこれとミッドサマーのパンフレットが売り切れていた。



 戦隊に続いては『チャーリーズ・エンジェル』へ。これも集団ヒーローものと言えなくもない。もやもやした気分の時はスカッとした映画が見たくなるものです。本国アメリカでは盛大にコケたそうで、ろくに宣伝もされず気づけば公開していた映画。仮にも大ヒットテレビシリーズが原点、それに過去2回も映画されてるのに、この扱いはひどい。本当にひどい映画なのかどうか、それも気になって見に行った。



 冒頭、リオで悪人相手に大暴れのエンジェル! そしてとある依頼から、組織崩壊の危機を迎えつつも敵を倒すエンジェル! かっこいいお姉さん方が悪者をぶった叩く、以上! なにこれ、普通に面白いじゃないの。ダレることもなくポンポンと展開するストーリーとロケ地、小気味よいアクション、悪の黒幕の正体に迫るサスペンス(まあ、これは洋画あるあるな、べたなオチでしたが)、何よりもテレビシリーズとドリューバリモア版と世界観が続いてるというファン泣かせな設定。これのどこがアカンかったのか? ベタやけどええやん、いやこれぐらいべたで爽快感のある映画のほうが、今のご時世、受けがいいと思うのですよ。点と点から一本の線へ。個々で活動していたエンジェルがチームとなっていく過程をきちんと描き、クライアントもただの賑やかしに終わらず、きっちり活躍して最後にはエンジェルに……というのがおもろい。テレビシリーズはろくに見てないけど、エンディングのあれって、ひょっとしたら? と思ったり。




 
 しかし、パトリックスチュワートって、Xメンとチャーリーズエンジェルの創設から関わっているのか、すげえなと思いつつも帰路につくのでした。テレビのニュースはコロナのことだらけ、家にいても映画を見るぐらいしか退屈はしのげそうにないのです。原稿書けよ。
 

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 怖いもの見たさ、というか昨年あたりから徐々にですが、今まで苦手なホラー映画を見るようになってきました。年取って『怖い』という感覚が弱くなってきたのか、現実のほうがよほど怖いという目に何度も遭わされてきたからか……。それはともかく、最近見た新作映画といえば『アントラム』だったりするわけで、今度はもっと楽しい映画見ようと思っていたら『ミッドサマー』が来た。あの、昨年散々怖がらせてくれた『ヘレデタリー』のアン・アリスター監督である。今度はどんなショックを見せてくれるのか。予告や宣伝を見ると、お花畑でみんな楽しそうに歌ったり踊ったりしている。でも知ってるぞ、楽しければ楽しそうなほどその裏側はどす黒いのだ。
 

 スゥエーデンの田舎、ホルガ村を訪れた5人の男女。村ではちょうど夏至祭の真っ最中。ニコニコと親切な村人に迎え入れられ、一緒にフェスティバルをエンジョイするのだけど……。なんかおかしいぞ?



 
 一言でいうと、村の奇祭に巻き込まれた若者たちが恐ろしい目に遭う話である。普通に風景撮っていてもどこかおかしい。村人がニコニコすればするほど、見ている方が不安になってくる。この監督のことだから、絶対恐怖のイースターエッグをそこらへんにちりばめているに違いない。その読みは当たった。昔なら『身の毛もよだつ十大残酷!』とか宣伝を打つはずである。でもお花畑でニコニコだからみんな騙される。そう、ちょうどこの村にやってきた若者と同じ気分になってしまう。



 次々とアメリカの若者を襲う奇習の数々、見ていて『もうやめてくれー!』『この監督頭おかしい、会ったらぶん殴ってやる!』と思うことしばしば。よくもまあ、こんなえげつないこと考えつくものだ。えげつないといっても、血まみれのグログロな映像ではない、それもあるけど、じわりじわりと迫ってくる怖さである。



 内容にちょっと触れるけど、と遠くで誰かが叫んでるけど、誰も気づかないとか、よせばいいのに村の近畿に触れてしまうお決まりパターンとかさ。最後の最後に明らかになる真実。これは映画だ、作り物なんだ、この俳優さんたちはちゃんとギャラもらって生きているんだ! と、身もふたもないことを考えながら、予測不能の不条理な恐怖を耐えていました。
 


 やっぱりここでも見たくない裸出すのかよ!
 みんなニコニコでどこかくるってるのは『2000人の狂人』か、見たことないけど。
 主人公たちが奇習、奇祭に巻き込まれててんやわんやするのは『21エモン』でも見たパターンだなあ。こっちのほうがえげつないけど。


 SNSではドラマ『TRICK』やお祭り男宮川大輔を引き合いに出されてるけど、なるほど、それもありだ。へんてこな奇祭に巻き込まれるのは日本人は慣れっこということか。それよりも『相席食堂』があの村を訪ねたら、千鳥はどのタイミングで『ちょっと待てー!』ボタンを押すのか非常に気にはなる。
 

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 先日、恩師が急死されてお通夜に行ったのはいいものの、ズボンのボタンが止まらなかったことに軽いショックを受けました。でも久々に大学の同期と会えて嬉しかったな、これも何かの御縁だと思いたい。
さて。



 仕事は終わらないけど、時間がない、そんなときでも映画に行って気晴らしするのさ。まあ、午前中に映画見て午後から仕事するべ、と新世界へ。久々の新世界国際劇場。


相変わらず物騒な看板である。今回はここで『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト』他2本。まさかの『ウエスタン』上映である。先週末『続荒野の用心棒』を美麗画質で見たところなのに、またまたマカロニが見れる嬉しさ。去年見たけど、いいものは何度見てもいい。でも長い。三時間弱の映画をよく新世界でやる気になったものだ。でもみる。長いので朝早くに行って初回を見る。
 
 荒野に自分の理想郷を作ろうとした男と、その遺志を受け継いだ妻、そしてその気骨に惚れた流れ者に、利権を奪わんとする悪漢。それぞれの思惑が重なり合う、決闘オペラ。長いのに説明不足だぞ、とも思うけどそこは行間を読んで察しろ、ということか。先週『野獣処刑人ザ・ブロンソン』で生き写しのようなそっくりさんを見たけど、今回は本物。4k画質で見ると、ブロンソンの肌の艶と張りがすごい。しかもレオーネ作品なのでクローズアップが多く、余計に目立つ。善玉も悪玉も顔で物言う、4k顔芸大会でもある。
 二時間強を何とか乗り切ってのクライマックス、ヘンリー・フォンダとブロンソンの決闘のカタルシスは何度見てもいい。このためにひたすら待つことができるといえば言い過ぎだけど、何とか見れる。
 『続荒野の用心棒』のどろどろの町も『ワンス~ウエスト』のカラカラで砂ぼこり立つの町も、どれもマカロニ。地元で変化球を投げるコルブッチに直球どころか本場に近づこうとしたレオーネ、数日の間に二人のセルジオの作風を見比べることができ、そしてまさかのマカロニウェスタンを劇場で続けてみることができて、遅れてきたマカロニ者は幸せだったのです。
 これで帰って仕事を……いや、その後の『ゾンビランド・ダブルタップ』も気になるので見た。先月近代ゾンビのオリジナル『ゾンビ』を見たところ、今回は最新のゾンビ、ゾンビ事情を見ようと思った。ゾンビ災害で荒廃した世界。ゾンビたちも知恵を付けたり俊敏になったり多種多様に進化していた。そんな中、主人公たちはホワイトハウスをねぐらにし、悠々自適に暮らしては時折ゾンビを狩っていた。コメディタッチのゾンビもので、前回は未見。前回見たら面白さ倍増したのかな、いやでも難しいな、という印象。時代のせいか、コメディだからか、ゾンビに対する危機感が薄い。人類の脅威だったゾンビもここではすっかりやられ役であり、対象年齢に配慮したせいか血糊も少なめ。ヒャッハーとゾンビを狩る、これが今のスタイルなのか、納得しながらもどこかもやもやさせながら劇場を出た。もちろん、その日は仕事してません。

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 死んだ。
 いや、まだ生きてる。前回『気になる』と書いた『アントラム・史上もっとも呪われた映画』を、仕事明けてそのまま京都に見に行った。いや、その日のメインは『ジャンゴ繋がれざる者』『続荒野の用心棒』の新旧ジャンゴ二段撃ち大会だ。その前に『見たら死ぬ』といわれる『アントラム』を見たりしたら、ジャンゴ見てる間に死んでしまうのではないか? でも映画館でぽっくり逝くのもいいかもしれない。とにかく気になるものはチャンスある限り見ておくのだ。



 『アントラム』はドキュメンタリータッチで物語が始まる。曰く70年代につくられたとあるホラー映画が、上映するたびに映画館が燃えたり、映画祭の関係者が変死するというのだ。今回、奇跡的にオークションに出品されていた『アントラム』を落札したとのこと。どうやらこの映画、完成してから何者かが手を加えた跡があるらしい。それは何か?



 と、ドキュメンタリーパートが終わり、『この先何があっても責任を負いかねます』といった注意書きが出た後、『アントラム』本編上映。これはちょっと驚いた。予告から察するに全編ドキュメンタリータッチで通すのかと思いきや、まさかの本編上映。本当に死んでしまう。




 
 お話はとある姉弟が、亡くした愛犬を復活させるためにとある山に入り、地獄に通じる穴を掘るというもの。本当に地獄とつながるのか、全編を貫く不安を誘う曲に、荒れた70年代っぽいフィルム。ええっと、これはどこからどこまでフィクションだったっけ? と見ていて少し混乱してしまう。地獄の門が徐々に開き、姉弟の周りに異変が起こる。山に入って割腹自殺を試みる日本人、そして山中に住む、悪魔を崇拝する怪しげな二人組。怖いのはいったいどっちだ、何なんだ? そして二人組に捕らえられた姉弟の脱出劇、そして明かされる真実。全編書くのは野暮、いやここまで書くのもどうかと思うが。




 全体的に不安げな雰囲気が漂う作品。作為的に手が入ったシーンもなんとなくわかる。どこかもやもやした気分になる、じわじわ怖いタイプの映画。 



 でも、最後に種明かし(フィクション的な)するのはいかがなものかと思いましたが。それでも、死ぬ。とか書いているけどまだ生きてる。ひょっとしたらもう自分でない者にすり替わっているのかもしれない。そういう楽しみ方もホラー映画のだいご味ではないか、と思うのです。




 そして昼メシ食って『ジャンゴ・繋がれざる者』へ。新作がアカデミー賞にノミネート(助演男優賞受賞!)されてタイムリーなタランティーノ監督、7年前の作品。タイトルからして『続荒野の用心棒』リスペクトだし、主題歌もそのまま。公開当時タランティーノがマカロニウェスタンやるぞ! と意気込んで見に行ったら、実にまっとうな西部劇だったのを覚えている。いや、まっとうではないか。黒人奴隷問題に切り込み、ドンパチといつものだらだら話を挟む新機軸ウェスタン。そうだ、この人の映画は痛快さとかアクションを期待すると肩透かしを食らうのだけど、それはそれで実に気持ちよくすかされるので嫌いになれない、いやむしろ好きですな。


 
 黒人奴隷ジャンゴとドイツ人賞金稼ぎがコンビを組んで、ジャンゴの妻を奪還するまでを大量の火薬と血糊でつづる西部劇巨編。クライマックスより中盤の、長い長いディカプリオトークの後堰を切ったように行われるドンパチがかなり派手、今見ると西部劇というより香港ノワールの影響が大きいのがわかる。マカロニ成分はそこそこに、好きなもの、やりたいテーマをぶちまけるタランティーノ流。ちゃんと落ちを付けてブツン、と終わるのもいつものことだし、選曲も毎度のことながら映像にぴったり。まるでMVを見ているようだ。
 

 そして、そして待ちに待っていた『続荒野の用心棒』! ガトリング銃搭載の棺桶を引きずる無口なガンマン、というキャラ設定だけで満点の映画である。勧善懲悪ならぬ勧悪懲悪の物語。まず、日本ではアメリカ西部劇と比較され、見下されがちだったマカロニウェスタンが、現在のポジションを得るまでにはかなりの時間がかかったし、さらにその中でも変化球ばかり投げるセルジオ・コルブッチの代表作がまさか4Kの美麗画像で甦るとは夢にも思ってなかったよ! 美しく汚い画像が見れる、泥でぬかるんだ街も、ペンキみたいな血糊も、ぎらついた男も、汗ばむ女のケバイ化粧もはっきりくっきりと見える。


 雨の降るぬかるんだ道、ハリウッド西部劇ではまずみられないどんよりとした空のもと、ジャンゴと政府軍、メキシコ軍の血なまぐさいやり取りが行われるのだ。最初に見たとき『なんじゃこれは?』と思った。少しも痛快ではないし、ジャンゴもヒーローらしくない。かなりの異色作だなと思った。レオーネ的なものを期待していたのだ。今回見直してみると、やはりジャンゴがよくわからない。メキシコのウーゴ将軍と旧知の間柄であるために、アメリカのジャクソン一味を叩きのめすのはわかる。でもジャンゴの目的は金だ。金のためにウーゴを欺き、逃走する。『荒野の用心棒』やその元ネタ『用心棒』のように敵対する両者をいがみ合わせて共倒れを図るというヒロイズムはない。だが、それがまたジャンゴの魅力でもあるかもしれない。

 

 ジャンゴは中盤の機関銃大乱射以降、これといって活躍しない。ただウーゴをうまく乗せて金をせしめるか、それだけに徹している。だから、終盤でようやく愛に目覚め、ジャクソンと対決するのは唐突な印象もあるけど、それもまたジャンゴのええ加減さであり、魅力の一つでもあるといえる。しかし、金をぶんどった罰を受けウーゴたちに両手をつぶされる。そのウーゴたちもまた、ジャクソン一派に返り討ちに遭う。悪が悪を食らう、それこそ舞台となった町のようにどろどろとした展開。だからこそ卑怯なジャンゴが映える。パンフレットによればジャンゴの妻を殺したのはジャクソンということで、これでラストの対決にも納得がついた。本来ならジャンゴは両手を潰したウーゴと戦わないといけない、と思っていたからだ。そんな型通りの展開にならないのがコルブッチのウェスタンである。
 鞭打ち、覆面集団、それにバイオリンとタランティーノの『ジャンゴ』が引き継いだポイントも多い。オマージュを見て原点を知る、今回の京都みなみ会館の組み合わせは最高にして最強である。



 ともあれ、昨年の『ウエスタン』に続いての快挙である。怪獣映画は定期的に見れてもマカロニはほぼ壊滅的だと思っていたところにこの嬉しい復活。これからも二人のセルジオの作品がスクリーンで見られることを遅れてきたマカロニ野郎は切に願うのである。
 この日見た三本とも『死と再生』が何となく引っかかってるような気がする。そして、アントラムの呪いがいつ来るのか、しばらくはびくびくしながら過ごしたい、と思う。
 え、新世界国際で『ウエスタン』やるの? 死んでられない! 

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プロフィール
HN:
馬場卓也
性別:
非公開
職業:
作家
趣味:
怪獣
自己紹介:
作家。一応作家。
CS放送のシナリオ公募で佳作入選。
『SHUFFLE! アンソロジーノベル』
でデビュー。
『School days 君といる、空』で長編デビュー。(ともにJIVE )

『真田十勇姫!』(ソフトバンクGA文庫)
シリーズほか、チョコチョコと。
ラノベ、ゲームシナリオ等々、何でもやりますのでお仕事お願いします。
 怪獣とかチャンバラが好きやねんけど、女の子率高いなあ。


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