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 作家馬場卓也のおもちゃと怪獣と仕事の三つ巴生活!  男もつらいし、女もつらい。男と女はなおつらい! てな訳でよろしく
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 死んだ。
 いや、まだ生きてる。前回『気になる』と書いた『アントラム・史上もっとも呪われた映画』を、仕事明けてそのまま京都に見に行った。いや、その日のメインは『ジャンゴ繋がれざる者』『続荒野の用心棒』の新旧ジャンゴ二段撃ち大会だ。その前に『見たら死ぬ』といわれる『アントラム』を見たりしたら、ジャンゴ見てる間に死んでしまうのではないか? でも映画館でぽっくり逝くのもいいかもしれない。とにかく気になるものはチャンスある限り見ておくのだ。



 『アントラム』はドキュメンタリータッチで物語が始まる。曰く70年代につくられたとあるホラー映画が、上映するたびに映画館が燃えたり、映画祭の関係者が変死するというのだ。今回、奇跡的にオークションに出品されていた『アントラム』を落札したとのこと。どうやらこの映画、完成してから何者かが手を加えた跡があるらしい。それは何か?



 と、ドキュメンタリーパートが終わり、『この先何があっても責任を負いかねます』といった注意書きが出た後、『アントラム』本編上映。これはちょっと驚いた。予告から察するに全編ドキュメンタリータッチで通すのかと思いきや、まさかの本編上映。本当に死んでしまう。




 
 お話はとある姉弟が、亡くした愛犬を復活させるためにとある山に入り、地獄に通じる穴を掘るというもの。本当に地獄とつながるのか、全編を貫く不安を誘う曲に、荒れた70年代っぽいフィルム。ええっと、これはどこからどこまでフィクションだったっけ? と見ていて少し混乱してしまう。地獄の門が徐々に開き、姉弟の周りに異変が起こる。山に入って割腹自殺を試みる日本人、そして山中に住む、悪魔を崇拝する怪しげな二人組。怖いのはいったいどっちだ、何なんだ? そして二人組に捕らえられた姉弟の脱出劇、そして明かされる真実。全編書くのは野暮、いやここまで書くのもどうかと思うが。




 全体的に不安げな雰囲気が漂う作品。作為的に手が入ったシーンもなんとなくわかる。どこかもやもやした気分になる、じわじわ怖いタイプの映画。 



 でも、最後に種明かし(フィクション的な)するのはいかがなものかと思いましたが。それでも、死ぬ。とか書いているけどまだ生きてる。ひょっとしたらもう自分でない者にすり替わっているのかもしれない。そういう楽しみ方もホラー映画のだいご味ではないか、と思うのです。




 そして昼メシ食って『ジャンゴ・繋がれざる者』へ。新作がアカデミー賞にノミネート(助演男優賞受賞!)されてタイムリーなタランティーノ監督、7年前の作品。タイトルからして『続荒野の用心棒』リスペクトだし、主題歌もそのまま。公開当時タランティーノがマカロニウェスタンやるぞ! と意気込んで見に行ったら、実にまっとうな西部劇だったのを覚えている。いや、まっとうではないか。黒人奴隷問題に切り込み、ドンパチといつものだらだら話を挟む新機軸ウェスタン。そうだ、この人の映画は痛快さとかアクションを期待すると肩透かしを食らうのだけど、それはそれで実に気持ちよくすかされるので嫌いになれない、いやむしろ好きですな。


 
 黒人奴隷ジャンゴとドイツ人賞金稼ぎがコンビを組んで、ジャンゴの妻を奪還するまでを大量の火薬と血糊でつづる西部劇巨編。クライマックスより中盤の、長い長いディカプリオトークの後堰を切ったように行われるドンパチがかなり派手、今見ると西部劇というより香港ノワールの影響が大きいのがわかる。マカロニ成分はそこそこに、好きなもの、やりたいテーマをぶちまけるタランティーノ流。ちゃんと落ちを付けてブツン、と終わるのもいつものことだし、選曲も毎度のことながら映像にぴったり。まるでMVを見ているようだ。
 

 そして、そして待ちに待っていた『続荒野の用心棒』! ガトリング銃搭載の棺桶を引きずる無口なガンマン、というキャラ設定だけで満点の映画である。勧善懲悪ならぬ勧悪懲悪の物語。まず、日本ではアメリカ西部劇と比較され、見下されがちだったマカロニウェスタンが、現在のポジションを得るまでにはかなりの時間がかかったし、さらにその中でも変化球ばかり投げるセルジオ・コルブッチの代表作がまさか4Kの美麗画像で甦るとは夢にも思ってなかったよ! 美しく汚い画像が見れる、泥でぬかるんだ街も、ペンキみたいな血糊も、ぎらついた男も、汗ばむ女のケバイ化粧もはっきりくっきりと見える。


 雨の降るぬかるんだ道、ハリウッド西部劇ではまずみられないどんよりとした空のもと、ジャンゴと政府軍、メキシコ軍の血なまぐさいやり取りが行われるのだ。最初に見たとき『なんじゃこれは?』と思った。少しも痛快ではないし、ジャンゴもヒーローらしくない。かなりの異色作だなと思った。レオーネ的なものを期待していたのだ。今回見直してみると、やはりジャンゴがよくわからない。メキシコのウーゴ将軍と旧知の間柄であるために、アメリカのジャクソン一味を叩きのめすのはわかる。でもジャンゴの目的は金だ。金のためにウーゴを欺き、逃走する。『荒野の用心棒』やその元ネタ『用心棒』のように敵対する両者をいがみ合わせて共倒れを図るというヒロイズムはない。だが、それがまたジャンゴの魅力でもあるかもしれない。

 

 ジャンゴは中盤の機関銃大乱射以降、これといって活躍しない。ただウーゴをうまく乗せて金をせしめるか、それだけに徹している。だから、終盤でようやく愛に目覚め、ジャクソンと対決するのは唐突な印象もあるけど、それもまたジャンゴのええ加減さであり、魅力の一つでもあるといえる。しかし、金をぶんどった罰を受けウーゴたちに両手をつぶされる。そのウーゴたちもまた、ジャクソン一派に返り討ちに遭う。悪が悪を食らう、それこそ舞台となった町のようにどろどろとした展開。だからこそ卑怯なジャンゴが映える。パンフレットによればジャンゴの妻を殺したのはジャクソンということで、これでラストの対決にも納得がついた。本来ならジャンゴは両手を潰したウーゴと戦わないといけない、と思っていたからだ。そんな型通りの展開にならないのがコルブッチのウェスタンである。
 鞭打ち、覆面集団、それにバイオリンとタランティーノの『ジャンゴ』が引き継いだポイントも多い。オマージュを見て原点を知る、今回の京都みなみ会館の組み合わせは最高にして最強である。



 ともあれ、昨年の『ウエスタン』に続いての快挙である。怪獣映画は定期的に見れてもマカロニはほぼ壊滅的だと思っていたところにこの嬉しい復活。これからも二人のセルジオの作品がスクリーンで見られることを遅れてきたマカロニ野郎は切に願うのである。
 この日見た三本とも『死と再生』が何となく引っかかってるような気がする。そして、アントラムの呪いがいつ来るのか、しばらくはびくびくしながら過ごしたい、と思う。
 え、新世界国際で『ウエスタン』やるの? 死んでられない! 

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プロフィール
HN:
馬場卓也
性別:
非公開
職業:
作家
趣味:
怪獣
自己紹介:
作家。一応作家。
CS放送のシナリオ公募で佳作入選。
『SHUFFLE! アンソロジーノベル』
でデビュー。
『School days 君といる、空』で長編デビュー。(ともにJIVE )

『真田十勇姫!』(ソフトバンクGA文庫)
シリーズほか、チョコチョコと。
ラノベ、ゲームシナリオ等々、何でもやりますのでお仕事お願いします。
 怪獣とかチャンバラが好きやねんけど、女の子率高いなあ。


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