忍者ブログ
 作家馬場卓也のおもちゃと怪獣と仕事の三つ巴生活!  男もつらいし、女もつらい。男と女はなおつらい! てな訳でよろしく
[3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 ご存じのように、自分は中途半端なモノカキと介護職の二足の草鞋を履いてるのです、不定休なので平日に休みになることが多く、今週も近所の人から『この人無職?』と思われそうなぐらいに平日を自宅で過ごしておりました。いや、無職ではない、書き物仕事があったんですな。で、その仕事がひと段落し、休みができた。とはいえ、出かけるといえば映画館かパトロールと称して古本屋やかリサイクル店のおもちゃを見に行くぐらい。まあ、これも何度も書いてるからご存じかと思いますが。




 そんな休日、見たいけどどうしようか、いやいや迷ってるぐらいなら行っておけ、と京都みなみ会館へ。車で出かけると、枚方を越えたあたりから温度がぐっと下がった感じ。さすがに寒い。着いたら、小雪が舞っていた。世間ではコロナウィルスの影響で京都の観光地に客が来ない、とか言ってたけどみなみ会館のある九条、十条近辺はいつも通りのように見えた。まあ、観光地らしいものが少ないからね。




 さて『気になる映画を見てすっきりしよう』、まず1本目は『野獣処刑人ザ・ブロンソン』である。昨年和製ブロンソンこと佐藤允特集を上映したみなみ会館に今度はジェネリックブロンソンが来る! ポスタービジュアルとタイトルからお察しの通り、主役はチャールズ・ブロンソン……のそっくりさん、ロバート・ブロンジー。だけどタイトルに『ブロンソン』と出る、強気な姿勢。だって、どう見てもブロンソンだから仕方ない。ブロンソンオマージュをブロンソンのそっくりさんで作り上げた奇跡の映画である。冒頭から、悪党がタバコを吸おうとするとそっとマッチを差し出し、続いて重いパンチを食らわせるブロンジー。





 この世のすべてが面倒くさそうな、バカボンのパパに似た顔だけではなく、動きも声もそっくりだ。特にあのしわがれた声は脳内で大塚周夫ボイスで変換されるほどにそっくり。物語は町をさすらうブロンジーが、ヤクの売人や売春組織の人間を問答無用で射殺し、郊外に住む母子家庭にせっせと送金するといういたってシンプルな構成。なぜ送金するのか、なぜ彼らを目の敵にするのか? 答えは徐々に明確になっていく。



 
 とはいえ物語は二の次で、観客は90分弱の間、ブロンジーのそっくり度を確認する作業をするようなものである。ジムのプログラムではなく肉体労働で鍛え上げたようなボディ、ポケットに片手突っ込むしぐさ、ブロンソンだ、ブロンソンが生き返った。そして時折挿入されるおっぱいと大量の血糊。本当にこれ、21世紀の、令和時代の映画かよと思えるほどの80年代テイスト。このままノーカット吹き替えで木曜洋画劇場で流してもいいぐらいの出来栄えである。ブロンソン、それも80年代ブロンソンの佇まいと作風を見事に復活させた快作、といってもいいかもしれない。とはいえ、80年代はヒゲのスーパーマグナム映画よりも筋肉マシンガン映画ばかり追っかけていたので、ブロンソンといえばマンダムだったり『荒野の七人』『ウエスタン』の人だったりするのです。そんなブロンソンうろ覚え世代でもはっきりとこれはブロンソンだとわかる映画。





 昨年末の『男はつらいよ・お帰り寅さん』を見てもやもやしていたのってこういうことなのでは? CGなりそっくりさんなりで『死亡遊戯』的な寅さんが見たかった、それがまさかブロンソンで実現するとは思わなかった。ちなみに『お帰り寅さん』に欠けていた邦画喜劇要素は『嘘八百』で補完した。






 雪山で裏切り者を木に縛り上げ、バーベキューソースをかける悪党。(特に理由はなく、この悪党は裏切りものをいたぶるのが好きなのだ。裏切り者が多いということは人望薄いのでは? 物語の整合性というよりも絵的な問題、クライマックスへの御膳立てなのだ)。『この辺には狼が多いからなあ』と笑う悪党に『すでに来ている』と銃弾をとともにしびれる登場をするブロンジー! 野獣が帰ってきた! デスウィッシュ! 本物よりも髪の毛さらさらだけど、これからももっと映画に出てほしい。ハリウッドも多分ブロンジーを待っているはず。でもたぶんホームセンターの500円DVDコーナーで見かける機会が多くなりそうだけど、それでも頑張れ!





 ザ・ブロンソンで体が温まり、冷え冷えする京都の町をポケット片手に突っ込みながらさまよう。悪党がいれば一撃必殺……いや寒いので誰も外には出ない。ブロンソンはバカボンのパパに似ている、ということでバカボンパパの好物であるニラレバ炒めを食べる。餃子も食べた。二品以上注文するということはこの上ない贅沢なのだ。、それでいいのだ。



 夕食を済ませ、再びみなみ会館へ。『ザ・ブロンソン』と同じく上映終了で、見ようかどうか迷っていた映画『ヘヴィ・トリップ俺たち崖っぷち北欧メタル!』である。そもそも北欧にメタルがあるのか? フィンランドにはレニングラードカウボーイズしかいないのでは? フィンランドの田舎町、幼馴染で編成されたメタルバンドが隣国ノルウェーのフェスに出場するまでを描く。よくある話である、昨日までちっぽけだった存在が努力と励ましで大舞台に挑むお話、音楽物もそうだけどスポーツものでもよく見られる展開である。『ロッキー』も『カリフォルニア・ドールズ』もそうだ。あと、日本の町おこし映画にもありそうだ。この手の映画は、いかにクライマックスで観客に拳を握らせるかがキモになっている、と思う。最後まで乗れるかどうか、歓喜の声を上げ、涙することができるか。北欧にメタルという未知の領域で、このベタともいえる題材にいかに取り組むのか?




 もう、冒頭から心掴まれました。メタラーと思しき長髪革ジャンの青年が、フィンランドの田舎町を自転車立ち漕ぎで走る! 立ち漕ぎですよ。そして街の若者にバカにされても言い返せない小心者。メタラーってアナーキーでバイオレントなのでは? それは舞台上のお話、普段の彼らはちゃんと手に職を持っているまじめな青年たちだったのです。中でも主人公が介護施設で働いてるのがポイント高い。老人介護施設なのか、障害者施設なのか判別しかねるけど、人のために働き、趣味の世界では紙に唾するこの切り替えが大事ですね。しかもこの介護施設での利用者とのやり取りや出会いが伏線にもなってくる。



 北欧の田舎でメタルというギャップの面白さ、よくある『弱小チームが大舞台に挑む』展開のツボを押さえつつもそこはメタラーのアナーキズムで、うまく外してくれる。その外しっぷりが痛快。ここ一番でゲロを吐いてしまう主人公、はぐれ者たちが村の脚光を浴びるも一転、挫折も味わいという展開に、思いがけない出会いと別れ。そして根性決めた珍道中。迎え撃つノルウェーの国境警備デルタフォースは名ばかりで寄せ集めの独立愚連隊、『コマンドー』への愛があふれた場面もあり。タイトル通り、警察に追われて崖っぷち、オタクはオタクが知る、の言葉通り彼らを助けるバイキングごっこの一団。




 追手と協力者、両者が見守るクライマックス、メタルを知らなくても見ている側もテンション上がるのはこれまでの展開が実に巧みだったから。トナカイの血とゲロと糞と暴力にまみれた、いいライブだった。



 映画の中で棺桶が重要な小道具として登場するのだが、これは翌日より上映の『続荒野の用心棒』への重要なブリッジだ、と勝手に解釈した。



 野獣の復活に週末シンフォニックトナカイ粉砕反キリスト戦争推進メタル、確実に見た人間の心に何かを残す2本だった。映画が終わると売店でTシャツを買い求めるお客もちらほらみられた。




 『ゾンビ』『続荒野の用心棒』の予告からブロンソン映画を見るなんて、いつの名画座だ、と思った。そしてマカロニとホラーがやってくる。これもぜひ見たい、いや見る。
 
 
 
 

拍手[0回]

PR
シネコンに行くとガンガン予告編が流れる映画というのは、その映画館が、あるいはその大本が一押ししている作品なんでしょうな、というのは何となく察しが付く。

 大阪、堺市だけなのかどうなのか、年末から『嘘八百』の予告がよく流れるし、どでかい看板もよく目立つ。そりゃそうである、『嘘八百』の舞台はここ堺市なんだから。百舌鳥古市古墳群が世界遺産に認定されて、にわかに活気づく堺市、さらに映画のロケ地になったのなら、こりゃもう鬼に金棒なんですよ。聖地巡礼の観光客がぞろぞろとやってくる! でも古墳群は、あの有名な前方後円墳を見たければ空を飛ばないと見れないわけで、現地に行ってもただお堀に囲まれた小山があるだけですよ。大丈夫か堺市? と新参の堺市民は思うわけです。古墳ではなく、映画の話。『嘘八百』は堺が舞台ということで、父親が見に行ったものの『なんか路地とかばっかりやった』とこぼしていたのを思い出す。




 今回、新作公開ということでその第一作が近所のシネコンで800円でリバイバル公開。これだけガンガン予告流してるんだから、ちょっと見てやろうかと思って見に行ってきました。



 これでいい、邦画はこれでいい。先月の『お帰り寅さん』にごっそり抜けていた喜劇要素がたっぷり詰まった骨董詐欺映画。いや、関西のオーシャンズ11か、エロと暴力が抜けたオークションハウスか。胡散臭い古物商と腕はいいけどさっぱりな陶芸家が、悪徳古物商に千利休幻の茶器を売りつける。もちろん贋作なんだけど、彼らをサポートする贋作ドリームチームの仕事っぷりが小気味よい。主演の佐々木蔵之介、中井貴一のコメディ演技も楽しい、派手ではないけどくすくす笑える一本だった。ライバル役の近藤正臣の和服の銀髪が、狐の化身のようで胡散臭い。




 父が言ってた路地ばかりの堺ロケ、というのもこっちからしたらどこか見知った風景ばかりで楽しい、南海電車の高架下、狭いアパートの家族三人で暮らす佐々木蔵之介なんか、すごく生々しい。だってもともと堺には観光名所というのはそれほど……。






 だましだまされ、そしてまさかの続編公開。


  前作を見た上は、あの連中がどうなったのかを知りたくて、続編も気になってしまう。

 『嘘八百 京町ロワイアル』は舞台が堺から京都へ。今度は古田織部の幻の茶器をめぐって悪徳古物商と……。おっさんばかりの中で花を添えるヒロインは広末涼子。でも広末もマジで恋する5秒前から数十年、すっかりおばちゃんやな。でもそれがいい、と思えるのはこっちも年を取ったからか。やたらと尻がクローズアップされるヒロスエ。

 

 前作からのレギュラーメンバーも続投、バームクーヘンにカモメ、シリーズを繋げるアイテムも継続。まさかの続編制作を機に、シリーズ化を視野に入れた、基礎固めっぷり。古田織部からとむさびーにまでもが同居する物作りの世界での戦い。前作よりも派手なお宝すり替え作戦。今回の悪役、加藤雅也は渋みと胡散臭さが増して、ぴったりのキャスティング。堺だろうが京都だろうが表れては中井貴一にアドバイスする変人学芸員塚地武雅もまさかの連投。




 安定した笑いと骨董薀蓄、今の邦画に欠けてるのは喜劇だな、と思わせてくれた作品。ぜひ、このままシリーズを続けてほしい、と思った。
 
 実に新年にふさわしい明るい作品でした。もう2月だけど。

拍手[0回]

(最近の映画の内容に触れてるかもしれません)



 今週、というか先週末のこと。土日に家にいる! 仕事もある! でもやることやってすっきりしてから仕事をしようと、レイトショーの『フォードVSフェラーリ』へ。60年代、フェラーリ買収に失敗、すっかりはめられた形になったフォード社社長が『ええい、フェラーリにレースで勝てい!』と大号令、選ばれたのはルマンで優勝した唯一のアメリカ人レーサーにイギリスの破天荒レーサー。二人のカーキチが、フェラーリ妥当という無理難題に挑む実話カーレース物語。



 
 二人のカーキチ、特にレーサー役のクリスチャンベールが静かな狂気を秘めた演技を見せる。よき夫よきパパなんだけど、どこかやばい感じを漂わせる人。車に乗ると実にイキイキとした表情を見せるサーキットの狂気。




 正直、カーレースのことは疎いので、どういうルールなのか、よくわからん部分もあったけど、いい年して第何台に挑むおっさんの姿は美しい。狂ってるけど。



 
 クライマックスのレースは熱い、でもちょっと長い。24時間レースだから。



 実話とはいえ、せつないラストもぐっとくる。帰り道はチャンベールのようにアクセルを踏み込む……ようなことはせず、安全運転で帰りました。




 その翌朝。日曜日だというのに早起きしてしまった。映画だ、映画行ってすっきりして仕事しよう。




 ということで『ジョジョ・ラビット』第二次大戦時、ドイツ人少年から見た戦争を描く、と書けば固い内容かと思いますが、まるっきり逆です。ハイルヒトラー、イエーイ! ビートルズの流れるオープニングが実にテンション高い。タイカ・ワイティティ監督です、アメコミ世界を自分の色に染めて神話世界を痛快スペースオペラに仕上げた『マイティソー・バトルロイヤル』の人です。ナチス万歳! イマジナリーフレンドがヒトラーという少年。このヒトラーが監督本人が演じてるけど、似てない。そしてやたらノリが軽い。ヒトラーのいじられ具合は仮面ライダーXのヒトデヒットラーとタメを張るぐらいである。負傷し、ヒットラーユーゲントには入れないけど、事務仕事をしつつナチスに奉仕する少年ジョジョ。そんなジョジョ少年、なぜか自分の家の屋根裏に住んでいるユダヤ人少女と出会ってしまい……。敵視しつつも次第に心動く少年、そしてイカした母親との毎日。戦局は悪化していく。ドイツが負けるかもしれない、ぐらぐら揺れる少年の心、そして母は……。




『おもろうて、やがて悲しき、でもおもろうて』であった。最高である。戦争を美化もせず、茶化しもせず、自分スタイルでその愚かしさとばかばかしさを見事に描き切っている。生かした母ちゃん美人だな、誰だろうと思ったら、スカーレットヨハンソンだった。ブラックウィドウじゃないか、さっき予告でバリバリ銃をぶっぱなしてたよ、女優さんってすごいなあ、と改めて思った。早くも今年ベスト1である。




 と、次の映画もすごかった。まだ今年は始まったばかりなのに、こんなに面白い映画が続々公開されていいのだろうか。屋根裏部屋から今度は半地下の家へ。『パラサイト・半地下の家族』である。韓国映画は侮れない、岩場でねずみ花火に点火するかのごとく、あっちへこっちへ予測不能の動きを見せる。家族の絆と描くのに怪獣をぶち込んだ『グエルム』のポンジュノ監督である。ただで済ませるわけがない。実際前知識なしで見に行ったら、本当にすごかった。



 とあるきっかけで徴大金持ちの娘の家庭教師となった半地下の家に住む青年。これはチャンスと、妹、両親もその家で働かせようと画策し、その目論見は大当たり……と、ここまではタイトル通り、金持ちに家に寄生する半地下の貧乏一家の物語である。ところが、ここから気持ちいいぐらいとんでもない展開になっていく。見ていて『え?』と声の出る展開だった。どんな脳みそしてるんだ、と思うぐらいの発想の飛躍というか、思考の合掌捻り。ジャンルは何かと聞かれたらブラックユーモアもの、としか答えるしかない。バカボン一家が迷い込んだ藤子不二雄Aの世界というべきか。暗く、重いけど、そんな状況だから最後はなんだか救われたような気がした。色々あって団地に引っ越した自分にはぐさりと突き刺さった。でも心地よい。




 半地下息子といい仲になる女子高生がみなみ会館の館長に似てるなあと個人的には思った。劇中で食べる、即席で作ったジャージャー麺がとてもおいしそうに見えた。次回はたぶんみなみ会館で大怪獣総攻撃。ああ、準備せな。


拍手[0回]

 なんとなく、まったく前情報を仕入れずに見た映画が思いがけず面白かった、ということがよくある。




 
 何度か足を運んだことのある九条シネ・ヌーヴォで、市川雷蔵祭が絶賛開催中。そういえば昨年は京都出町座で『陸軍中野学校』をみたっけ。毎年どこかの映画館で開催される雷蔵まつり。ソフトも出ている、ひょっとしたら配信でも見れるかもしれないのに盛況なのは、やはりこの早世したスターの魅力によるものだと思う。



 シネ・ヌーヴォは、下町の商店街の少しはずれにあるので、邦画の旧作をかけると結構恒例のお客さんで満席になったりする、という印象。




 今回は三隈研次監督『斬る』。前から見たいと思っていた一本である。その不幸な生い立ちのために、運命に翻弄される若侍の姿を描く。開巻いきなり、女性の横顔のアップから始まる。彼女が懐剣を振りかざしとある奥方の寝所を襲うシーン、そしてタイトルへ。予測不能である。そして主演、市川雷蔵が登場。彼はさる藩で、父と妹との3人で仲睦まじく暮らしている。しかし、その出生の秘密が明らかになるにつれ、彼に不幸が訪れる。父を、妹を殺され、その仇を取った後、出奔する雷蔵。旅先の宿で、武家姉弟による仇討ち騒動に巻き込まれ、弟から姉の身を託される雷蔵。しかし、弟を思うあまりに姉は追手の前に飛び出し、文字通り体を張ってそれを防ぎ、息絶える。ここでも守れなかった。瞼の母、妹、そして名も知らぬ武家の女、自分のために死んでいった女を思い、独り身でいると誓った雷蔵は次第にやさぐれていく。しかしながらその剣の腕前を見込まれ、さる藩の家臣になったものの、そこでも。



 武士道とは無情なものです。そんな無情さを一身に受けている雷蔵。出生の秘密、世を拗ねた姿勢、邪剣の使い手等々、同じ原作者だから眠狂四郎との共通点もちらほら見える。


 自分が出奔するきっかけを作ってくれた浪人や、逃走の手助けをしたのに逆に姉を見殺しにしたと逆切れされる武士との再会、世間は広いようで狭い。そんなめぐりあわせもまた、雷蔵を孤立させていく。



 雷蔵の邪剣『三絃の構え』が生えるラスト。斬るじゃなくって突く、そして決着が刀ではない、というところに、同名だけどまったく内容が違う岡本喜八監督の『斬る』との共通点を見つけたり。前半がほのぼの武家ホームドラマ風だったのは、後半の悲壮な展開を見越しての計算だったのか。で、途中でうとうとしていてあの有名な『人体真っ二つ』シーンを見逃してしまう。不覚。



 一本だけ見るのは、と思い。その後上映の『忍びの者』も気になるものの、昼食をとってから、川島雄三特集『接吻泥棒』へ。川島雄三といえば『幕末太陽傳』ぐらいしか見ていない。あれは日活だったけど、今回は東宝映画。主演は宝田明。怪獣映画以外で宝田明を見るのも珍しいな、とそれぐらいの知識しかなく本編を見た。




 主人公とヒロイン、主要人物を交互に紹介し、それが自動車事故で鉢合うまでをテンポよく見せていくオープニングにびっくり。こんなにスピーディーでコミカルな映画だったのか! モテモテボクサー宝田明とそれを取り巻く4人の女たちの様子をアップテンポで、速射砲のごとき台詞回しで描くラブコメ。スタイルのいい宝田明はまるで劇画キャラだし、モテモテ男が最後に真実の愛に目覚めるお話自体も少女漫画チック。原作石原慎太郎で、物語の冒頭とラストに登場、自ら映画の開幕と終幕を宣言する実にメタな展開であるけど『幕末太陽傳』も当初は主役のフランキー堺がセットから撮影所を飛び出す設定ではなかったか。映画の枠をぶち壊そうとするチャレンジ魂が見られた。じゃあ、他の作品はどんな感じだろうと、気になってしまう。




 しかし『接吻泥棒』、なんだか引っかかる。確か怪獣ネタがあったようななかったような……。あ、思い出した! 獣人雪男がカラーで出演していたのだった! と気が付いたときには遅かった。ここでもうとうとしてしまい、肝心のシーンを見逃してしまった。また逢う日まで、である。


 
 と、肝心なところを見逃しつつも、面白い二本が見れた休日でした。睡眠時間はしっかり取ろう。でも眠い時は眠いんですよ。


拍手[0回]

 年も明けて一週間、元日から飛び飛びに介護の現場で働いてお正月気分も何もあったものではなかったが、職務上の決まりとか何とかで、今週まとめて有休をとることになった。これでやっと正月らしく、のんびり休めるな、と思ったものの、MOVIXのお誕生日1000円クーポンの期限も近かったので、やっぱり映画に出かける。




 

 一本目は『男はつらいよ  お帰り寅さん』。渥美清氏氏が亡くなって、どうやって新作を作るのか、公開前から話題になっていた作品である。最近のスターウォーズシリーズのようにフルCGで寅さんを復活させるのか? 『男はつらいよ』は学生時代、夏・冬と何度か映画館で鑑賞したことがある。正月興行の際は、平成ゴジラシリーズと同じく場内が満員になるぐらいの人気シリーズだった。見始めたのがちょうど寅さんが脇に回り、甥の満男の恋愛を主演に置いた頃だった。破天荒な寅さんはいつしか甥っ子のよき理解者となっていった。今回もその満男が実質上の主役で、彼の初恋の相手との再会と別れを描いている。とら屋はいつしか喫茶店になり、バリアフリー化されていた。御前様は代変わりし、懐かしいさくらや博もすっかり年老いてしまった。こんな時、寅さんはどこで何をしているんだろう。寅さんは、満男やみんながふと思い出した時、回想シーンにのみ登場する。『メロンかぁ、メロンといえば……』と、真樹日佐夫の『さらば!アニキ』のごとく寅さんのメロンにまつわる面白エピソードがデジタル修復された美麗画像で挿入されるのである。思い出は古びないのだ。迫りくる老いや、親子関係でみんな悩んでる、みんなつらいのだ。そんな中で元気いっぱいで面白おかしいのは回想シーンの寅さんのみ。『死亡遊戯』かと思いきや『宇宙怪獣ガメラ』しかも、怪獣パートじゃなくって人間ドラマパートが多めの編集である。


 満男を演じる吉岡秀隆は様々な役側を演じてきたけど、満男を演じる時は完全に『あの時の満男』に戻っている。妻と死別し、娘と暮らす男やもめだけど、やっぱりいつもの頼りなくしょぼくれた満男なのである。でも作家でそこそこ稼いでいるから、モノカキの端くれとしては羨ましいご身分なのだ。そして久々に女優にカムバックした後藤久美子は色々と濃かった。ちなみに『007ユアアイズオンリー』よろしく、オープニングで顔出しして主題歌をうたう桑田佳祐も濃かった。久々に見るゴクミをずっと『セナの嫁』と思っていたけど間違いだ、『アレジの嫁』だ。寅さんは新撮影パートに全くでないかといえばそうでもなく、時々、満男の後ろにふっと現れる。まるで幽霊かジェダイの騎士のようだ。そこでスターウォーズのオマージュかよ、と思った。



 まるで寅さんのいた時間が夢だったかのような構成。現実はつらいよ、見ているこっちもつらいよ、である。まるで、シリーズの長い長いエピローグのような作品である。でも好きな人はラストの歴代マドンナ総登場で涙腺が崩壊したかもしれない。


 笑いに行こうかと思ったら、とてもつらくなってしまった。次は楽しい作品を、ということで『仮面ライダー・令和・ザ・ファースト・ジェネレーション』を。恒例冬のライダー映画、今回は現役のライダーゼロワンと前作のジオウが共演。機械と人間の在り方を毎週描くゼロワンだが、今回は歴史が歪められてしまい、機械の支配する世界に放り込まれることになる。そこで父(ロボット)との再会があり……と、こちらも割とまじめな内容。お笑い芸人志望で毎回くだらないギャグを飛ばすゼロワン=飛電或人も、今回ばかりはまじめで、どちらかといえば真面目に学生生活を送っていたジオウ組がお笑い担当。いや、ライダー映画はコメディではないからこれでいいのか。ライダー映画恒例の『生き残った人類によるレジスタンス軍』も登場。小銃を撃ちまくる際、ちゃんと薬莢がカラカラと落ちていたのに感心してしまった。



 今回登場の敵怪人は……ライダーだらけだ。或人の父が変身する仮面ライダー1型、そしてアナザー1号。ゼロワンもプロトタイプのゼロゼロワンに変身。映画限定フォームが最新型ではなく、プロトタイプというのも珍しい。強化服の歴史を見ているようで楽しいし、昭和ライダーから入った身としてはバッタモチーフのライダーがぞろぞろ出てくるのが嬉しい。




 前作の夏ライダー映画が世紀の怪作、珍作だったので、今回は割とオーソドックスに、父と子の絆、そしてゼロワンの令和ライダー1号襲名を真面目に作っているないう印象。とはいえライダー映画である、バトルの連続で退屈させない、実にお正月映画らしい内容。ちなみに劇場には自分一人だけ。貸し切り状態だった。


 外に出ると冬の嵐か、風が強く吹いていた。そう、風こそがライダーのエネルギー源なのだ、と家路についた。



 そういえば、まるでタイプが違う2本だけど、過去の回想のような主人公の夢で始まるという共通点があった。

拍手[1回]



忍者ブログ [PR]
カウンター
プロフィール
HN:
馬場卓也
性別:
非公開
職業:
作家
趣味:
怪獣
自己紹介:
作家。一応作家。
CS放送のシナリオ公募で佳作入選。
『SHUFFLE! アンソロジーノベル』
でデビュー。
『School days 君といる、空』で長編デビュー。(ともにJIVE )

『真田十勇姫!』(ソフトバンクGA文庫)
シリーズほか、チョコチョコと。
ラノベ、ゲームシナリオ等々、何でもやりますのでお仕事お願いします。
 怪獣とかチャンバラが好きやねんけど、女の子率高いなあ。


カレンダー
02 2024/03 04
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
最新TB
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析