忍者ブログ
 作家馬場卓也のおもちゃと怪獣と仕事の三つ巴生活!  男もつらいし、女もつらい。男と女はなおつらい! てな訳でよろしく
[16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [24] [25] [26]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 見たいものは見れるうちに見ておけ。



 前回の『ロボコップ』に続いて、今回も80年代の映画。新作映画がバカバカ公開されているのに、後ろ向きである。しかし、見たいものは見れるうちに見ておけ、である。


 午前十時の映画祭『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ・ディレクターズカット版』である。まずタイトルが長い。それに上映時間4時間11分と、尺も長い。午前十時に始まったとしても、終わるのは14時過ぎである。その日は午後から仕事、間に合うのか? 間に合わせるさ、と家を出たら……雨だった。仕方ないので車で出発。映画は難波のTOHOシネマズ。近辺に止めるよりも新世界辺りに止めた方がうんと安いし、そこから歩いてもたかが知れてる。雨の中、新世界から日本橋を抜け、ひたすら歩く。




 


 何とか映画館にたどり着いて、時間も間に合った。ここから4時間強の昔々のアメリカのお話が始まる、果たして寝ずに見れるか?




『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』はマカロニウェスタンのパイオニア、セルジオ・レオーネの遺作である。これをスクリーンで見れる日が来ようとは! と最終日ギリギリに滑り込んだ。作品数は6本と少ないながら『荒野の用心棒』がヒットし、『夕陽のガンマン』でマカロニの金字塔を打ち立てたのち、『続夕陽のガンマン』辺りから『ウェスタン』『夕陽のギャングたち』と、徐々にスケールと上映時間がアップしていくレオーネ映画。『ワンス~』も最初見た時は3時間ぐらいだったのが、ソフトが出るたびに尺が伸び、今回は監督の当初の構想通りの編集で4時間11分になったらしい。上映前にその旨がテロップで出ていたが、散逸していたフッテージやテストフィルムを何とか4Kにリマスターしたとのこと。監督が死んでもフィルムは生きているのだ。



 今まで西部開拓時代や南北戦争、メキシコ革命等々、イタリア映画だけどアメリカの歴史を描いたレオーネ監督がついにアメリカに上陸、1920年代から60年代、ニューヨークのユダヤ人の生き様をゆったりとしたテンポと、いつもながらの容赦ない暴力で綴っていく。禁酒法時代のニューヨークの様子を完全再現した美術の豪華さ、そこに生きる人々、エキストラの多さに目を見張る。そんな中に生きる少年たちがいつしかギャングとして成功していくまでをゆったりと描いていく。友情と裏切りというレオーネ節も健在。冒頭、ギャングが何かを探し回っており、それが主人公のことだと徐々に明らかになっていく見せ方も、『ウェスタン』や『続夕陽のガンマン』でも使われていた。なぜ追われているのか? ここで物語は主人公ヌードルスの過去へ、そのまた過去へとさかのぼっていく。





 長尺のギャングものという事で『ゴッドファーザー』と比較されがちだけど、あちらは組織、ファミリーの物語であるのに対し『ワンス~』は個人の物語である。一人のユダヤの悪童の成長と切ない別れ、である。禁酒法時代が終わり、アメリカが新たな一歩を踏み出した時、ギャングもまた過去のものになっていく。ヌードルスの、仲間を想う気持ち、友情から起こした裏切り行為、しかし彼自身もすでに裏切られていた。すべてが明らかになるのには、30年の時間が必要だった。
 

 しかし、長かった。途中で休憩が入るのが3時間を超えたあたり。そこから残りの一時間ちょっとですべて解決するのか? と見ていてハラハラしてしまった。レオーネ映画お約束の一対一の対決もラストにちゃんと用意されているが、派手さはなく、静かに決着がついていく。新たに追加されたシーンは元のフィルムの状態が悪かったせいか、明らかに画質が違うし、『これ、いらんのと違う?』と思うものばかりだった。肝心の部分はぼやかして、とにかく人間ドラマをゆったりと描くのがレオーネの意図だったのだろうか。
 


 4Kで甦る若きジェニファー・コネリーの美しさと、胡散臭いオヤジ世界チャンピオンバート・ヤングの意地汚さ。デニーロはよく腰を振り、体に悪そうなクリームたっぷりのケーキが食べたくなる、そんな映画。しかし長い。でも最後のなにもかもやり切ったデニーロの笑顔とモリコーネの美しい音楽に救われたような気がする。


 レオーネはこのあとスターリングラード攻防戦を描いた映画を製作したかったらしいけど、完成したら5時間越えの超大作ができたんじゃないか、と思う。編集とかそんなことよりもとにかく見たい絵を撮って繋げろ!




 上映が終わると、駆け足で駐車場に戻った。雨はもうやんでいた。昔々アメリカでは仲間のために裏切った男がいたけど、現在大阪の片隅では仕事に追われる男が一人、いたのだ。何とか、間に合いましたが。
  

拍手[0回]

PR
 
 出会いのタイミングというのは大事なもので、どれだけ数を見ても十代のころに見た映画のインパクトは強烈なものでして。


 これは個人的な意見で、人によっては20代、30代の方が印象に残ってる方もいるでしょう。自分は十代、中高生の頃なんですな。それがまたちょうどいい具合にいい感じの映画がやってきた時期でもありました。80年代後半はいわゆるSFX映画がブームだったんですな。猫も杓子もSFX、あるいはスタローンとシュワルツェネッガーの筋肉路線、あるいはジャッキーチェンが限界を超えて死線を彷徨うほどのアクション、そんな中学生が見たらおかしくなりそうな、おかしい中学生が見そうな映画がどかどかとやっていた頃。



 それは世代によって違うのは当たり前のことで、人によっては70年代パニック映画だったり、60年代マカロニウェスタンだったり、ぐっと下るとアメコミ映画だったりするのだ。十代の映画との出会いは素敵な衝突事故なのです。

 そんな中の一本に『ロボコップ』がありました。ある日、父親が映画館でもらったといって一枚の新聞をくれました。ロボコップと書かれたタイトルにアメコミ調の漫画、ロボコップ図解に使用銃器の解説……いっぺんに魅了されました。いやひょっとしたら映画の情報自体はすでに知っていたかもしれません。とにかく、アメリカからかっこいい正義のロボット映画がやってくる、デザインもメタリックで宇宙刑事ギャバンみたいでかっこいい! 実は仮面ヒーローに馴染んだ身としてはあの『口が出ているデザイン』というのはどうにも好きになれませんでした。ライダーマンとか。でもそんな考えを払拭してくれたのがこのロボコップと翌年公開のバットマンだったのです。それにロボット、人造人間の類はちょいちょい映画に出ていましたが、だいたいが悪役。その最たるものが『ブレードランナー』のレプリカントとターミネーターだと思うのです。アメコミ映画全盛の今ならまだしも、30年前は正義のロボットヒーロー映画というのも珍しかったのです。今でも珍しい? 
 映画館で前売りを買ってロボコップメモ帳をもらい、映画を見終わたらサントラCDを買い、ビデオが出れば……。ちなみに同時上映『サンタリア魔界怨霊』悪魔にとりつかれた子供とその父親を描いたホラーだったと思う。1988年の正月映画第二弾はロボコップと帝都物語という、特撮映画、アクション映画の新しい波がやってきた時期でもありました。これで世の中が変わる、と本気で思ってましたが、あまり変わりませんでした。

 無敵のボディに3点バーストのごっつい銃オートナイン、時折アイデンティティに悩む姿、コマ撮りで動くED-209、コブラ砲……とにかく中学生にとって『ロボコップ』は強烈なインパクトを残してくれたのです。もちろんバイオレンスとこま撮りが強化された2も、さらにアニメっぽくなってついに空を飛んだ3も大好きです。
 そんなロボコップが、劇場に帰ってくる! というわけで『サスペリア』と『ロボコップ』が並び、時空が歪んでいるような京都出町座へ。


 
 ビデオやDVD、ブルーレイで何度か見ているけど、劇場で見るのはひょっとしたら公開時以来かも。久しぶりに見たロボコップは……無敵のボディに3点バーストのごっつい銃オートナイン、時折アイデンティティに悩む姿、コマ撮りで動くED-209、コブラ砲……当たり前だけど中学生の時と一緒! ここが和歌山国際劇場だったら売店でチョコフレーク買ってもりもり食べながら見ていたはず! いい年こいたおっさんだが、見ている間は中学生に戻っていた、はず。場内にはそんな『元中学生』が他にもいた、はず!


 『思い出補正』というものは、実際よりもかなり上乗せして記憶されていることが多いが、この『ロボコップ』に関しては、血糊と火薬量が思い出補正を上回っていた。ドバドバ血が出て、ボカンボカン爆発していた。ガソリンスタンド一軒爆破させて、その中をロボコップが歩いてるなんてどうかしてる。

 
 ロビーには著名人によりロボコップポストカードの展示。このポストカードはランダムに入場者プレゼントにもなっていた。正義のロボット映画には入場者プレゼントは必須!

 帰宅時はもちろんサントラCDをかけながらロボ気分でロボ帰宅。序盤で盛り上げるだけ盛り上げて大爆発するあのテーマ曲は、まさにヒーローソングの趣。そして帰宅すれば、今度はブルーレイの吹き替えでロボコップを再見。

 出町座のある商店街には古本屋が二軒、それに館内にも古本コーナーがあり、上映までの時間つぶしにはちょうどいい。もしそこでロボコップのパンフレットと出会えたら、こんな素敵な偶然はない、と思って探したけど。

 東宝映画ばっかり発掘してしまった。これはこれで良し。

 結局ロボパンフはうちの物置から引き揚げてきました。

 もし今度、ターミネーターやランボーがリバイバルされたなら、その時は再び中学生に戻るだろう。あの時に戻って、映画を楽しむに違いない。そしてチョコフレークをもりもり食べる。で、持ち込み禁止で怒られる。

拍手[1回]

 先日、時間ができたので子供らと映画に行こうという話になった。中二の次男は『アクアマン』、小六の娘は『メリーポピンズ・リターンズ』だろう、父はどっちに行く? と迷っていたら、二人とも『ボヘミアン・ラプソディ』を見るという。さすがロングラン大ヒット、アカデミー賞候補だけある。テレビでもたびたび取り上げられていたから、いつの間にかクイーンは、うちの子供たちの興味もがっちりつかんでいたのだ!



 思えばあのお下品熊映画『テッド』で、『フラッシュ・ゴードンのテーマ』が使われていたのがそもそものきっかけだった。ちなみに子供らはフラッシュ・ゴードンは、オリジナルの劇中劇、クレヨンしんちゃんにおけるアクション仮面のようなものと思っていたらしい。フラッシュゴードンが切っ掛けというのは自分と同じだ。そして中二の次男は部活中に流す音楽として、うちにあるクイーンのCDを持っていった。CMやテレビでもよく使われているからおなじみのメロディーになっているのだろう。あの次男が、洋楽を聞くとは! 



 という事で、父は二度目の『ボヘミアン・ラプソディ』。うちの子供らがアニメでも、アメコミでも、もちろん戦ったり爆発したり、怪獣が出たりする映画ではない、ミュージシャンの映画、しかも字幕版を見るのは初めてのことではないだろうか?




 お話は……やはり『まんがクイーン物語』といった感じで、その結成から栄光と挫折、復活までをぎゅうぎゅうに詰め込んであり、とても分かりやすく、そこに、みんな知ってる歌が流れるから、盛り上がらないわけがない。これで『フラッシュ・ゴードンのテーマ』があればなぁ。ようやくパンフを買えたので、フレディのあのカクカクした動きは幼少時に嗜んだゴルフとボクシングから来ているのでは? という説を読んで、なるほどーとなりました。



 俳優さんの再現ドラマでも十分なのに、ダメ押しにエンディングで本物映像が流れるのは『電人ザボーガー』と一緒だなあ、そりゃファンの涙腺を直撃しますわ。その内容に子供らも大満足、映画館の帰りの車中はもちろんクイーンでした。




 そしてその数日後。次男と行けなかった『アクアマン』を、父は一人で行きました。だって、映画サービスデーだったから。マーベルのアベンジャーズは超巨大な商業施設、イオンモールに対してDCのジャスティス・リーグは一流品ぞろいの商店街といった印象。その商店街の魚屋さん、アクアマンが『バットマンVSスーパーマン』の顔見せから『ジャスティス・リーグ』を経て、初の単独作品。


 
 正直、最近のアメコミヒーロー映画は『うん、まあこんな感じですな、かっこいい一話ですな』という感想を抱きがちで、今回もまあ……と思っていたのですが、違った、アカンこれは小中学生が見て興奮するタイプのやつや! アトランティスの王子アクアマンが、世継ぎ争い&海底人の地上攻撃を阻止するために立ち上がる。お話はそんな感じですが、もう魚介類がうじゃうじゃ出るので、映画館にいながら水族館気分も味わえる、一粒で二度おいしい映画、しかも巨大タツノオトシゴやモササウルスも不通に海底人の乗り物として登場するので、怪獣好きも楽しめる。




 アクアマンのライバル、ブラックマンタの強いけど、どこか不格好な容姿は、手下の戦闘員がスタイリッシュなのと対照的で、どこか日本のライダー怪人を思わせる。覚醒したアクアマンにカメラがグーンと近寄り、その体内に入り込むと、様々な魚介類のイメージがバシバシと現れるのは、なんだか戦隊っぽい(モチーフの動物なり、乗り物なりが変身時にインサートされるアレ)。





 海底人の恐れる巨大怪獣の頭部にすっくと立ち、アクアマンが現れる姿はウザーラに乗ったゲッタードラゴン、アクアマンの義弟(粗暴な兄に理知的で狡猾な弟という構図はアメコミの定番?)オーシャンマスターの兜もどこかダイナミックプロ! 海の大怪獣タコガニラ(勝手に命名)の暴れっぷり、カブトガニ型メカ、火山の爆発、海底洞窟と没ネタ込みで84ゴジラも思わせたりと、様々なフックが用意された映画で大満足でありました。アメコミ映画はヒーローが深刻ぶってるのよりも、コミカルな味付けの方が見ていて楽しい。まさに痛快を絵にしたような、ヒゲと筋肉とダイナミックプロな『海のトリトン』でした。またジャスティスリーグやってよ、パンフレット買うの忘れた!
 

  

拍手[0回]

 もう何度も書いているのでうんざりされるかもしれませんが、自分のお仕事はモノカキ兼介護職。いや、介護がメインで、サブがモノカキ。いつかモノカキ業がメインの収入を超えたら、やめてやろう……と思いながらずるずると続けております。と、ここで自分の境遇を嘆くわけではありません。介護職というのは休みが不定期なので、平日に連休だったり、週末働いたりすることが多いのです。人が休んでいる時に働き、人が働いてる時には休む。でも平日お休みだと、まるで自分が無職だと思われそう、と不安になったりします。」




 しかし、そんなヒマな大人のために、ということはないと思うのですが、映画館はサービスデーを平日に設定したりすることが多いのです。
 そんな昨日は松竹系のMOVIXはメンズデー、TOHOシネマズはシネマイレージデーで、普通の大人料金よりもお安く映画が見れる嬉しい日。そんな日に見たいものが重なると、ハシゴしたくなるってものです。ケチか? いや、本当のケチはレンタルになるまで待ちますよ、いやサイトの情報だけで、脳内で映画を一本でっちあげるかも。自分は中途半端なケチであります。でも、そのけちけち精神は大金持ちになっても捨てたくないので、金持ちになりたい。
 まずはバイクで湾岸道路を飛ばしてMOVIX堺へ。インド映画『バジュランギおじさんと、小さな迷子』が近隣ではここしかやってないし、今週で上映終了、という事。
 
 パキスタンの少女がインドで迷子になってしまう。信仰心の熱いおじさんが彼女を引き取り、そして彼女を親元に届けようと奮闘する、そんなお話。ところが、お話は簡単には終わらない。なにせインド映画です、2時間半以上の長尺なのです。歌と踊りがあるから長い、というのもあるのですが、それだけでは済まされない事情があるのです。



 まずインドとパキスタンは地続きのお隣同士なのですが、あまり仲良くない。それと、宗教の違い。主人公のおじさんはハヌマーン(ウルトラ六兄弟とも共演したあの白猿)を信仰するヒンドゥー教徒。対して迷子の少女は鶏肉オーケーなイスラム教徒。インドでは異教徒なのですな。島国に育ち、宗教は都合のいい時にイベントを行うぐらいの信仰心が薄い、日本人(そりゃ信仰心の熱い日本人もいるとは思いだすが、ここは漠然としたイメージで)からは想像できないような複雑な事情が絡み合ってるのです。しかし、宗教の違いが意外なヒントを生んだ。迷子の少女は口がきけないし、読み書きができない。自分がどこから来たのか伝えられない。この設定が実にうまい。おじさんは、彼女がインド人だと思っていたら、ある日彼女が鶏肉を食べ、クリケットのパキスタンチームを応援するのを見て確信するのです。イスラムだ、パキスタンの子だ! しかし、その頃外交的にうまくいってないパキスタンへ行くのは至難の業、そこで旅券もビザもなしに国境線を超えることに……。パキスタン、という手掛かりだけの少女とおじさんの珍道中、ただでさえ不法侵入の上にスパイに間違えられて警察からもマークされることに。道中で彼と知り合ったジャーナリストも仲間に加わり、少女の親探しの旅は続くのです、終わり。このままだと全部書いてしまう。



 前半は歌って踊って戦うインド映画、後半はパキスタンに移ってのロードムービーという構成。イスラム教のムスクに入ることを拒むおじさんに『ィんだよ、細けえことは』と歓迎、その上に脱走の手助けをする司祭。生活と宗教が密接な関係にある彼らには異教に触れることはとんでもないことなんですが、迷子の少女のためなら致し方ない。いつしかおじさんの気持ちも変わってくる。全国の娘のいるお父さんは必ずウルルルしてしまい、外出の際は決して娘を手放すものかと思いたくなる。小さな善意の前には宗教も国境も関係ないのです。信心深く愚直で素直すぎる(ギリギリバカ)おじさんのキャラクタ―も素晴らしい。彼のまっすぐな気持ちが二つの国をほんの少し、動かした。しかし、ネットの力はすごい。山奥に住む人たちもスマホで動画見る時代なんだなあ。



 そしてウルウルしながら次の目的地、TOHOシネマズ鳳へ。次の上映まで30分しかない、いけるか、行くのさ。


 
 M・ナイト・シャマランの新作『ミスター・ガラス』だ。シャマラン監督もそういえばインド系だ。毎回観客が『え?』となるようなどんでん返しを用意することで有名な監督、しばらく『もういいよぉ』となっていたけど、今回があの『アンブレイカブル』の誰も待っていなかった続編とあれば見るしかない。『アンブレイカブル』も不思議な映画だった。列車事故で唯一生き残った男、なぜ彼は無傷なのか? というミステリー仕立てのお話かと思いきや、彼と対極の、生まれつき骨折しやすい体質のコミック研究家を置くことで、徐々にヒーローものとしての実態が浮かび上がってくる構成。それも地味な、地味なヒーローものの第一話と最終回。アンブレイカブルマンの特技は怪力と警察に通報することだ。



 
 
 あれから十数年、アンブレイカブルマンは街の監視者として息子と二人でヒーロー活動をやっていた! やってたんかい! しかし、彼は凶悪な『ビースト』と対決中に警察に捕まり、ミスターガラスのいる重度の精神病院に収監されてしまう。この『ビースト』もシャマラン監督『スプリット』のキャラクター。自身の中に24の人格が入った犯罪者だ。要するにシャマランユニバースである。悪役とヒーローがそろった。でもそれで? コミックの世界をぐつぐつと煮込んで地味にした内容は相変わらず。町内レベルのインフィニティウォーである。シャマラン監督は広げた風呂敷を畳みつつ、別の風呂敷を広げていく。まるで石川賢の漫画のようだ。アメコミ、ヒーローの世界なんて本当にあるのか否か? 絶望から転じて希望にあふれるラスト。これは続き撮らないといけないですよ。マーベル、DCのハデハデなヒーロー映画の裏にべったりと張り付くような、地味なシャマランユニバース。『アンブレイカブル』の頃と違い、ヒーロー映画更盛の中に作られたカウンターみたいな作品。ぜひ、全てのシャマラン映画は繋がってるという事で、サイン星人やビレッジ獣の再登場をお願いしたい。そういえばこの映画もネットが重要なキーになっておりました。




 そして見たいものすべて見終わり、次の見たいものが来るまでじっとおとなしくしようと思うのでした。冬眠です。



拍手[0回]

 人、というか男、それもごく一部の頭の悪い男はなぜか特訓シーンに憧れる。主人公が特訓に特訓に重ねて勝負に打ち勝つ、そのカタルシスも自分も体験したいと思うのだろうか。そして、この広い世界には少なからず『特訓映画』というジャンルが存在する。その筆頭がジャッキーチェンの初期作品と『ロッキー』シリーズだと思う。ひょっとしたらそれしかないかもしれない。いや『ベスト・キッド』もあるさ。




 
 そんな特訓映画の系譜である『クリード・炎の宿敵』を見てきた。ロッキーのライバルアポロの息子、アドニスを主人公に据えた『ロッキー』スピンオフの二作目で、しっかり『ロッキー』の精神も受け継いでいる。とはいえ、劇場で『ロッキー』を見るのは中学生の時『ロッキー4』以来ではないか? あれ以降、なんとなくスルーして、ビデオで見たクチである。『クリード』の前作も、『ロッキ-だけどロッキーじゃないしな』と思い、スルーしてしまった。今、それを激しく後悔している。




 今回はその『ロッキー4』に登場したソ連のボクサー、ドラゴの息子がアドニスとロッキーに挑戦するという、いわば『ロッキーと戦った男の息子が、ロッキーと戦った男の息子と戦う』というややこしいもの。アドニスにしてみれば、自分の父を殺した男の息子と勝負するわけだ。愛人の子で顔も見たこともない父の仇打ち? そこはうまく処理されている。仇打ちではなく、自分の居場所を見つけるために戦うのだ。



 かつて父もその座に就いた世界ヘビー級チャンピオンになり、結婚、出産と人生順調のアドニス。しかしその頃、ロシアではかつてロッキーに敗れて以来負け犬のレッテルを張られ、妻にも逃げられ細々と暮らしていたドラゴ親子が、復讐のチャンスをうかがっていた。




 今回はアドニスの成長物語であり、ドラゴ親子の物語でもある。『クリード・チャンプを継ぐもの』の続編であると同時に『ロッキー4炎の友情』の続編でもあるのだ。ややこしい。


 この先、多分内容に触れます。




 物語はスポーツ映画の王道ともいうべき、『敗退→復帰→特訓→勝利』のラインに沿って進んで行く。反則勝ちとはいえ、ドラゴの息子ヴィクターにボコボコにされ病院送りになるアドニス。妻の出産を経て、今再び自分というものを見つめ直す。それにはヴィクターとの再戦しかない! 一度は仲違いしたロッキーをコーチに迎え、ニューメキシコの『ボクサー虎の穴』で猛特訓。いつの時代になっても特訓シーンは燃えるものがある。それが突飛なものであればあるほど、人は、男は真似したくなる。時代が変わってもそれは一緒。でもしんどいのはいやだから、代わりに走ってくれ、アドニス! 
そして、アドニス初め、ロッキーのチームは敵地ロシアへ……。 




 アドニスの苦労はよくわかる。生まれてきた娘(難聴かもしれないという不安)のため、妻のため、なによりも自分のために再び立ち上がる様子が丁寧に描かれている。でもいくら哀しみのブロックを積み上げても、お金持ちのボンボンじゃない。




 ボクサーにはハングリー精神が必要、とはよく言われているが、今回はドラゴ親子の方がよほどハングリーなので、そっちに感情移入してしまう。普段は肉体労働に従事し、夜はボクシングで実績を上げていくヴィクター。国にも、妻にも見捨てられた親子が取るべき道はロッキーとその弟子への復讐しかなかった。




 ドラゴ父を演じるドルフ・ラングレンの枯れ切った顔にその30年間の苦労の様子が現れる。時に息子を叱咤し、時に褒めて一流のボクサーに仕立て上げる。二人とも口数が少ない。だからクライマックス、劣勢に立った息子にタオルを投げて『もういいんだ』と声を掛ける姿にグッとくる。かつて、ロッキーはタオルを投げなかったために、親友アポロを死なせてしまった。それを踏まえての結末だったのだろう。ソ連のボクシングサイボーグと言われたドラゴも血の通った人間であり、父親なのだ。しかし、元ヨメ(ブリジット・ニールセンがまさかの再登場。ドラゴを捨てて政府高官の嫁に。彼女こそロッキー以上にドラゴを奮い立たせる存在だったのではないか)が見守る前でのドラゴの表情はとても苦しそうだった。『ロッキーとその弟子を倒して元嫁をぎゃふんといわせてやりたいぜ! でも、もうどうにもならないんだよなぁ』という苦渋に満ちた顔。その元ヨメが、さっと会場からいなくなってようやく人間らしく、父親らしく息子に接するドラゴ父。ここでウルっと来てしまう。




 アポロの息子の更なる飛躍を見にきたつもりが、思いがけず敵役であるドラゴ親子に感動してしまった。もう、次回からはドラゴ親子の映画でいいよ! とさえ思ってしまう。ドラゴはあれから相当苦労した。でもロッキーだって散々な目に遭ってきた、というのは『ロッキー5』で描かれてるけど『ロッキーザファイナル』を作って以降、この映画なかったことになってるんですな、残念。それと、いつの間にかロッキーのろくでなしの義兄、ポーリーが死んでいたことに驚いた。




 

拍手[0回]



忍者ブログ [PR]
カウンター
プロフィール
HN:
馬場卓也
性別:
非公開
職業:
作家
趣味:
怪獣
自己紹介:
作家。一応作家。
CS放送のシナリオ公募で佳作入選。
『SHUFFLE! アンソロジーノベル』
でデビュー。
『School days 君といる、空』で長編デビュー。(ともにJIVE )

『真田十勇姫!』(ソフトバンクGA文庫)
シリーズほか、チョコチョコと。
ラノベ、ゲームシナリオ等々、何でもやりますのでお仕事お願いします。
 怪獣とかチャンバラが好きやねんけど、女の子率高いなあ。


カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新TB
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析