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 作家馬場卓也のおもちゃと怪獣と仕事の三つ巴生活!  男もつらいし、女もつらい。男と女はなおつらい! てな訳でよろしく
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 年も明けたのはいいけれど、今年はいろいろあって一人。独りぼっちのクリスマスは辛くないけど、一人の正月は辛い。しかも今年は三が日まるまる休みというミラクル。介護関係者に盆も正月もないのですが、たまにこういうことがある。こんな時ほど仕事場でダラダラしたいと思ったことはない。とはいえ、年越しを職場で迎えたので、その代わり、という配慮かもしれない。



 正月ぐらいは家でのんびりごろごろしててもいいはずだけど、テレビは再放送とダラダラ長いだけの特番ばかりで見たいものがない。ならば買い込んで未視聴のDVDでも見てやるか、いやファーストデーなので映画館に行こう、といつもと同じ思考と行動をとるのでした。今年も変わりませんな。



 新年一発目の映画は『来る』。話題のホラー映画である。正月からホラー。でも、他にこれというのがない、こともないけど、見たいもの優先させるとこれになった。



 
 幸せな家族を襲う得体のしれないバケモノ、それを守るために立ち上がるフリーライターと霊能力者! 予告や漏れ伝わる情報だと、そういう映画のように思えた。でも実際見てみると……いい意味で『思ってたんと違う』映画だった。



(内容に触れるかもです)



 物語は妻夫木聡扮するヒデキの幼少時の回想から始まる。森の中で少女と遊ぶヒデキ。でもその少女は、自分は山に連れていかれるという、次はあんたの番だ、とも。なぜな
ら『あんたは嘘つきだから』だからだ。



 成長したヒデキは東京の会社に就職し、仕事も恋愛も順調、結婚して娘ができて、その様子をブログにアップする等イクメンとしてもパパ友からもカリスマ扱いされる。
 



 このヒデキがうっとうしい。文字にすれば『頑張ってるお父さん』な感じもするけど、妻夫木史上もっとも薄っぺらで中身のない役ではないだろうか。不安がる妻に対して『大丈夫、大丈夫』と慰める声のトーンが軽い。へらへら笑顔で、実は自分のことしか考えてない。イクメンぶりだって、世間に向けて『いい家族』アピールをしたいだけ。娘がケガしても、淡々とブログをアップするだけ。逆にいえば、これだけイーっとなるキャラを演じられる妻夫木氏の演技力がすごいのだ。もう、別の作品に出ても、見てるこっちはイーっとなってしまうかもしれない。







 この幸せな家族に迫る魔の手。次々と起こる異変に、ヒデキは知人の民俗学者を頼り、フリーライターの岡田准一からキャバ嬢兼霊能力者のマコトを紹介される。



 この筋書きだと、軽薄なヒデキが尋常ならざる異変を前にやっと父として夫として、心の底から家族を守るために立ち上がる、ような筋書きのように見えるではありませんか。でもそうはならない、ヒデキは物語の中盤でバケモノに殺される。



 え? そう、この映画の主人公はヒデキではなかった。未亡人となった妻、黒木華はシングルマザーとして娘を育てるが、そこにも魔の手が……なるほど、今度は奥さんを守るために岡田准一が立ち上がるわけだ。でも、黒木華も死ぬ。



 マコトの姉で国家的霊能力者松たか子がついに多忙なスケジュールを押さえて立ち上がる。日本中から霊能力者を集めバケモノを迎え撃つのだ。バケモノも黙ってはいない、やかましいおばちゃんの団体旅行にしか見えない沖縄のシャーマン、ユタを血祭りにあげる等、松たか子の計画をつぶしにかかる。



 新幹線で何かに気付いた霊能力者のおっちゃんたちが、ルートを変える相談をしたり、こっそり泊まり込んだカプセルホテルで場違いな正装に着替えたりと、この辺の『徐々に集まって大作戦を決行する』雰囲気はホラーではなく戦争映画や、怪獣映画のテイストである。



 やがて始まる一大攻防戦。住人たちを避難させた団地を前に行われる、神仏お構いなしの大祈祷作戦。しかもクリスマス・イブ。このごった煮感が凄まじく狂ってる。



 『一番怖いのは人間』という使い古された言い回しがあるけど、この映画もまさにそれ。生まれてこの方虚飾に虚飾を重ねて生きてきたであろう妻夫木の薄っぺらさに、元々薄幸そうなのに、紙粘土でこしらえた能面のような顔をした黒木華。誰も実は子供のことなんか考えていないのかもしれない。育児から逃げるように男に走った黒木華をバケモノが襲う。



 劇中法事や結婚式、飲み会等々、やたらと人が集まり飲食するシーンが繰り返される。そこで行われる人間の嘘と本音。怪奇現象よりもこっちの方が見ていて怖い、というか生々しい。個人的には妻夫木の出身地である関西地方で行われた法事で、ポツン、と座り愚痴をこぼす吉本新喜劇の俳優、青野敏行の存在が生々しさを上塗りしてくれる。嘘と本音で固まった人間の業がバケモノを呼んだのかもしれない。本来ヒーロー役に回るはずの岡田准一も、過去に恋人の子供を堕胎させたという経験をしているため、実は弱い。



 そもそも、怪異の原因が妻夫木の少年時代の体験だとしても、その関連性は物凄く薄い。なぜ襲われるのか、理由がはっきりとしていない。いや『嘘つきだから』狙われたというシンプルなものなのか。



 不快の快、という矛盾した表現がぴったりくる映画。監督の目指したのは人間のいやらしさなんだろうな。無垢な子供や人間離れした霊能力者の方が強いのですよ。でもそれも紙一重、という弱さを持っている。



 続々集まる霊能者の中、センターを陣取る隻腕の柴田理恵。このキャスティングはすごい。一人で『マッドマックス・怒りのデスロード』に出てきたおばちゃんライダーに匹敵する存在感を持っている。ただのバラエティに出てるおばちゃんではないのだ。



 以上、思ったことをつらつらと。とにかく、心に引っかかる映画なのでした。



 自分は父親として大丈夫やろか? と不安になった。


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プロフィール
HN:
馬場卓也
性別:
非公開
職業:
作家
趣味:
怪獣
自己紹介:
作家。一応作家。
CS放送のシナリオ公募で佳作入選。
『SHUFFLE! アンソロジーノベル』
でデビュー。
『School days 君といる、空』で長編デビュー。(ともにJIVE )

『真田十勇姫!』(ソフトバンクGA文庫)
シリーズほか、チョコチョコと。
ラノベ、ゲームシナリオ等々、何でもやりますのでお仕事お願いします。
 怪獣とかチャンバラが好きやねんけど、女の子率高いなあ。


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