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 作家馬場卓也のおもちゃと怪獣と仕事の三つ巴生活!  男もつらいし、女もつらい。男と女はなおつらい! てな訳でよろしく
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 70年代、日本は空前のカラテブームだったという。『燃えよドラゴン』の大ヒットで、カラテ、カンフー映画が大人気。しかし、ブルース・リーはこの世にいない。動ける奴を探せ、とにかく空手ができるやつを探せ! 世界中の映画界がポスト・ブルース・リーを求めた。だってカラテ映画はそれほど金かけなくていい、しかも当たればでかい。日本映画もご多分に漏れず、独自のカラテスターを探した。そこで白羽の矢が立ったのが、すでにアクションスターとして人気のあった千葉真一。あの『ょす! にぃよす!』という独特な掛け声から繰り出される空手は人気を博し『殺人拳』『地獄拳』等々、数多くの東映マーシャルアクション映画の主演を務めた。しかし、当たり前の話だが千葉真一は一人しかいない。


『もっと他におらへんのか!』



 カラテ映画という鉱脈を掘り当てた東映は、次なるカラテスターを探した。しかし、そうそう体が動く俳優がいるわけもない。そこで逆転の発想『そうや、空手できるやつに俳優やらせたらええやんけ!』が生まれた。そして、アメリカ在住の空手家、山下タダシに声がかかったのだった……。




 以上、妄想です。たぶん当時そんなことがあったんじゃないかな、と思ったので。洋泉社『ブルース・リーと101匹ドラゴン大行進』を何度も読んだ身としては、その名を何度も目にした山下タダシとその主演作『ザ・カラテ』シリーズ。本物を使ったカラテ映画とは、いったいどんなものだろう? ソフト化もされておらず、いや、されていても見ようとは思わなかったかもしれない。



 そんな『ザ・カラテ』が三角マークの映画を積極的に上映する、大阪のオアシス、新世界東映で上映! 一仕事終えたので、見に行くことにした。


『ザ・カラテ』
世界武道大会に出場するため、アメリカから京都にやってきた山下さん。ラーメン屋のお手伝いしながら、武道大会の裏に潜むどす黒い陰謀を空手で解決する。
『ザ・カラテ2』
武道大会が終わったものの、まだ京都在住の山下さん。前回敵によって両目が見えなくなってしまったものの、空手の技は衰えず、世界中の武術家に狙われることに。今回は名刀を盗んだ武術集団と対決する。




 
 以上、ざっくりとした2作品の解説。主演の山下さんは、空手の腕前はすさまじい、鎌ヌンチャクもトンファー捌きも鮮やか。対する世界中から集められた武術家も胡散臭いものの、かなりの動きを見せて、山下さんと好勝負を見せる。武術大会、盗まれた名刀というメインの話に、やくざじみた武術集団という、いつかどこかで見たような東映カラテフォーマット。しかし、主演の山下さんは俳優ではない。ヒゲ面で西城秀樹を模したようなもわっとしたヘアースタイル。どう見ても、主演の顔ではない。しかも演技が棒読み、というかそこはアメリカ帰りということで片言。棒読みの片言という感情が全く見えない演技。しかしそれでも山下さんは一生懸命怒ったりものを食べたり、照れたり、笑ったりを演じる。カラテに真摯に向き合ってきたであろう山下さんは、演技に対しても真剣に向き合っている、棒読みだけど。


 対する世界中からやってきた、怪しげな流派の武術家たちももちろん外国人。よって台詞はもちろん片言の日本語。




『ヤマシタァ、オマエヲタオスー』
『ヨオシ、カカッテコイ!』



 そんなやり取りが続く。よって台詞のない、アクションシーンになるとなぜかほっとした。


 片言VS棒読み、さらに山下さんが身を寄せる日本正武館の、鈴木館長も出演作が多いものの、空手はプロでも芝居は素人。こなれているとはいえ、どこか微妙。さらには館長の娘役堀越陽子さん(常に和服、着物はだけてのパンチラキックもあり)も女優さんなんだけど空手の型がばっちり決まっていたので、この人も素人では? と錯覚してしまう。棒読みに見えてくる! 恐るべき片言棒読み地獄! 



 これが延々続くのか、もうずっと戦っていてくれ! あぁ、どっちにも福本清三が別の役で出ている、怖い! しかし心配無用。山下さんが下宿するラーメン屋。カンフー映画のポスターがそこら中に貼られている、マニアなら行ってみたいお店。でもラーメンは汁っ気が少なくてまずそう。そんなお店の厨房で働くのはあの男、主人の孫娘が帰ってくるなり『身体検査か?検便取ったか、虫おったか?』と、ティーン女子にずけずけと下ネタをぶつける男、山城新伍である。棒読みと片言の渦の中、どうせ誰もわかるまい、と思ったかいつも通りのマイペースなのか、限りなく出演シーンに笑いをハヒーハヒーとギャグをぶち込んでいく山城新伍。言葉でのコミュニケーションが不自由ならば、言葉の遊撃隊をぶち込んでおけ! という趣旨だったのかもしれない。



 このギャグ要員山城新伍とラーメン屋との交流が、殺伐とした『ザ・カラテ』シリーズをマイルドなものに仕上げ、片言の青年の協力者というポジションにうまく収まっていた。
 1、2作ともにクライマックスは鈴木館長親子も巻き込んでの乱闘になるのがパターン。しかし、2にはあのヤン・スエが出演。筋肉ムキムキの不愛想、こんな顔のおばちゃんいるよねと思わせるヤンスエが京都に! しかも山城新伍との夢の顔合わせも実現。誰が望んだ、この組み合わせ!  




1作目で両目を負傷した山下さんは、2作目では全編盲目という設定。なぜその設定? 『座頭市』テイストも盛り込みたかったのか、単なる気まぐれか? 素人俳優にさらに盲目の演技を強いるとは。ひょっとしたら、山下さんの目力が強すぎるので、その目を塞いだのか?



 日本人、少年たち、山城新伍の交流を経て山下さんは強くなる。棒だ、素人だという評判ばかり目にした『ザ・カラテ』シリーズ。慣れてくるとそのアットホームな雰囲気が心地よくなってくる。もちろん世界中から刺客もやってきて、血生臭さはぬぐえないけど。これは同じメンバーで作られた3作目も見ないといけない、そんな気がしてきた、というか見たい。3本も作ったんだから、それなりにヒットしたんだろうな。同時上映『女必殺五段拳』。ここにも鈴木館長出演、とのこと。ガンバレ山下さん!



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プロフィール
HN:
馬場卓也
性別:
非公開
職業:
作家
趣味:
怪獣
自己紹介:
作家。一応作家。
CS放送のシナリオ公募で佳作入選。
『SHUFFLE! アンソロジーノベル』
でデビュー。
『School days 君といる、空』で長編デビュー。(ともにJIVE )

『真田十勇姫!』(ソフトバンクGA文庫)
シリーズほか、チョコチョコと。
ラノベ、ゲームシナリオ等々、何でもやりますのでお仕事お願いします。
 怪獣とかチャンバラが好きやねんけど、女の子率高いなあ。


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