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 作家馬場卓也のおもちゃと怪獣と仕事の三つ巴生活!  男もつらいし、女もつらい。男と女はなおつらい! てな訳でよろしく
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 前回のブレードランナーもそうだし、60~80年代の名作がリバイバル公開されるというのは、いくらレンタルや配信で気軽に見られる時代だといっても嬉しいことで。




 
 そんな名作を低価格で提供してくれる午前十時の映画祭では『砂の器』を上映中。これまた散々語られてきた感のある日本映画の名作で、何度もリメイクされるぐらいの古典、今年上映された八甲田山に並ぶ『古書店のパンフコーナーでいつも見かける映画』の一本でもある。70年代のオールスター大作映画、脚本は『日本沈没』の橋本忍。この機会に見ておこう、と劇場へ。
 蒲田の操車場で起こった殺人事件。遺体の身元が判明するにつれ、浮かび上がる様々な人間ドラマ。いきなり捜査シーンから始まり、何かが起こっていることを観客に匂わせつつ順を追って丁寧に事のあらましを説明する構成である。
 サスペンスと見せかけた骨太な人間ドラマであり、音楽ドラマでもある。地道に足で稼いできた事実がすべて一つの線で結ばれる捜査会議、それと同時進行で行われるコンサートに、悲しい過去の回想シーンがかぶさるクライマックスは実に鮮やか。
 主人公の丹波哲郎の大熱演、文字通り靴底をすり減らす丹念な聞き込みを丹念に描くものの、もう一人の主人公ともいうべき音楽家加藤剛の挙動からその真相までもが徐々に暴かれていく展開。
 難病、親子、そして美しい日本の風景という日本人の涙腺を緩ませる感動ジェットストリームアタック、足りないのは動物だけである。



 クライマックスに差し掛かるや、劇場のあちらこちらですすり泣く声がする。もう40年以上も前の映画、すでに何度も映像化されてきた作品なのに、いまだに人の心を揺さぶり続けるというのは、この映画が全く色あせていないという証拠。どれだけ風景が変わっても、人の心や絆は変わらないという証拠、のようでもある。



 
 俳優たちの大演技大会に圧倒され、映画の持つパワーの底知れなさに打ちのめされたような気がした。推理劇でもあり、音楽劇でもあり、そして丹波劇。この年の丹波哲郎は同時にノストラダムスの予言を研究し、熱弁をふるっていたはず。たとえがそれが方便でも真実に変えてしまう弁論の錬金術師。そんな丹波ワークスに立ち向かうようなキャストの熱い演技、加藤嘉は本当に病人のように見えるし、渥美清はどこまでも渥美清、緒形拳は底抜けに優しい。なんとなく、軽い気持ちで見たらとんでもないものを見てしまった感じがする。とにかく、個人的にはすすり泣くどころではなかった。



 日本映画の得体のしれないパワーというのを全身で受け、その日の午後は抜け殻のようになっていた。タイトルの『砂の器』が比喩でもなんでもなく劇中本当に出てくる!
子供の何気ない遊びから、物語を暗示させるようなタイトルを引っ張て来た松本清張もまたすごい、と今更ながら思った。普通なら『◎◎殺人事件』だろうなあるいは『宿命』にするところを『砂の器』! 内容がよくわからないところがいいのである。



 というところで、今日はこれまで。 


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プロフィール
HN:
馬場卓也
性別:
非公開
職業:
作家
趣味:
怪獣
自己紹介:
作家。一応作家。
CS放送のシナリオ公募で佳作入選。
『SHUFFLE! アンソロジーノベル』
でデビュー。
『School days 君といる、空』で長編デビュー。(ともにJIVE )

『真田十勇姫!』(ソフトバンクGA文庫)
シリーズほか、チョコチョコと。
ラノベ、ゲームシナリオ等々、何でもやりますのでお仕事お願いします。
 怪獣とかチャンバラが好きやねんけど、女の子率高いなあ。


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