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 作家馬場卓也のおもちゃと怪獣と仕事の三つ巴生活!  男もつらいし、女もつらい。男と女はなおつらい! てな訳でよろしく
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 じーっとしててもどうにもならないかもしれないが、じっとしててもなんとかなることもある。ここ最近は暇に任せて『バットマン』をテレビ、映画構わず見てすごしていた。ハードでダークなバットマンもいいし、ポップでねじの緩んだバットマンもいい。ゴジラシリーズがそうであるように、バットマンもどんなのが来てもこだわりなく受け入れられる。最近はハードで暗いバットマンが多いから、たまには原色バリバリの愉快なのも見て見たいな、でも無理だろうな、と思うのはゴジラにまたフットワークの軽い戦闘やシェーを望んでいるのと同じかもしれない。



 そんなバットマンで近年評価が高いのは『ダークナイト』を筆頭とするクリストファー・ノーランの3部作。見直してみると、バットマンの存在がどんどん薄くなり『街対悪』の構図が強くなってきているなあ、という印象。そんなノーランの新作『ダンケルク』が公開中という事なので、見に行ってみる。前作『インターステラー』は劇場で見逃し、レンタルで『すげえ!』となった映画。今度はどんな『すげえ』が待っているのか。その前に黒沢清監督『散歩する侵略者』を。この監督も『すげえ』のひとである。単なるJホラーかと思いきや、人類が壊滅寸前にまで追い込まれる『回路』の監督である。本当はバリバリの怪物、ホラー映画やりたいんじゃないかなという思いが作品から感じられる人である。未見だけど『リアル』も、SFサスペンスと見せかけてクライマックスは『恐竜怪鳥の伝説』だったと聞く。うまく企画を通して、あとは好きなことを随所にぶちまけている、そんな印象。






 今回も『この映画のテーマは夫婦愛を描いたサスペンスです!』とか言っておきながら、その実態は『予算の都合で怪獣や宇宙人のスーツも新調できず、派手な特撮も使えないウルトラセブンのとあるエピソードを、お金かけて作った』ようなものである。ハードSFだなんだと言われ続けているウルトラセブンをよりハードにすると、セブンがいらなくなるという矛盾。じゃあ『ウルトラQ』でいいんじゃないの? でもタイトルが『散歩する侵略者』だからね、いやでもセブンを想起させる。見ていてセブンの没脚本『他人の星』も思い出した。





 
 ある日突然奇行が目立ち、自分は宇宙人だと言って地球人の『概念』を集めだした夫に翻弄される妻。そして一方で、宇宙人と名乗る青年と出会った雑誌記者の物語が描かれる。両者が交わった時、物語が……。物語は静かに日常を描き、そして徐々に、じんわりとそれが剥がれ落ちるのを描く。宇宙人の侵略がただの狂言ではなと分かったあたりから、世界が狂いだす。なぜ狂っていくのか、主要な人物以外誰も知らない。クライマックスに派手な見せ場があるものの、メインはじんわりと崩壊していく日常パートではないだろうか。冒頭から『この映画どうなるの?』と思いながら、ぐいぐいと引き込まれていく感覚。






 今回の『概念を奪う』という侵略者の作戦は斬新。家族とは? 仕事とは? 自分とは? 愛とは? 普段口にしている言葉、その意味を、侵略者という外からの視線で浮き彫りにしていく。またそれによって修復していく人間関係という皮肉。





 いつも眠そうな松田龍平の風貌が宇宙人っぽく、その妻である長澤まさみはいつも怒っている。長谷川博己と前田敦子は去年のゴジラに続き、今年は侵略者と遭遇することになる。去年は頼もしい味方だった無人爆撃機が……。





 タイトルはセブンっぽいけど、あの夕焼けは『ゴケミドロ』、知り合いが突如他人になる恐怖は『ボディスナッチャー』かな、とか過去の侵略もののエッセンスをついつい探してしまう。宇宙人に乗っ取られた少女、垣松祐里のアクションが最近流行のカンフー系の華麗なものではなく、殴る、ぶつかる、飛びつくといった泥臭いプロレスっぽい戦闘だったのは、プロレスラーが主演した侵略SF『ゼイリブ』なのかも。または黒沢監督が涙したプロレス映画『カリフォルニア・ドールズ』クライマックスで多用される飛びつき技からかもしれない。などと考えつつ、世界はいつしか見えない侵略者によって……。





 原作が元々舞台だったというのにびっくり。やっぱり企画通すときは『人気舞台の映画化で、夫婦愛がテーマなのです!』とかやったのかな。『新しい形の侵略SFです!』では通らない気がする。去年はゴジラという目に見える脅威がドッカンドッカン人間の世界に侵略してきたけど、今年は見えない脅威がこっそりやってきて、じんわり破壊していくといった感じ。




 
 そして『ダンケルク』へ。第二次大戦中、実際にあった英仏の撤退作戦をとてつもない緊張感で描く作品。ドラマっぽいドラマはなく、その時の様子をパートごとに切り取ったような映画。ただひたすら逃げる。追う側のドイツ軍は一人も姿が見えない。見えない敵が銃弾を撃ち込んでくる恐怖。やってくるのは救援の船か、それとも見えないドイツ軍か。冒頭から緊張しっぱなしである。『ダークナイト』でジョーカーが登場するときに流れる『ビィー――――ン』という音楽がずっと流れている感じ。実際かなりの頻度で『ビィー――――ン』が流れている。そして気が緩むとドカン! とドイツの攻撃が来る。見ているこちらも戦場に放り込まれたような感覚に陥る。とにかくこの緊張状態から逃げたい! と思ってしまう。映画の内容はダンケルクで援軍を待つ一応主人公の悪戦苦闘と、救援に向かう民間の船舶(ここだけドラマっぽいものがある)、そしてその上空で行われる英独の空中戦と大まかに3つのパートに分かれ、それらがタイムラインを無視して描かれるからややこしい。こりゃ二回目を見ろという事か。



 とにかく逃げて、おぼれて、逃げて、溺れて。状況が状況だけによく水に浸る映画である。
 


 大がかりなCGを使わないと公言しているノーラン監督は、とにかく本物をぶつけ爆破させる。特に空中戦はすさまじい。CGでなければあれはいったい何なのか? 実機を飛ばしたのか、ミニチュアなのか? いつしか人はCGという存在に縛られてしまっていたようだ。青空のドッグファイトは壮絶でもあり、美しい。



 しかし、ここで困ったことが起きた。猛烈の腹部の調子がおかしくなってきた。去年胆のうを取ってから、突発的な便意に見舞われることに慣れてきた。でもこんな時に来なくてもいいじゃないか! 宇宙人でも、ドイツ軍でもなく、真の見えない敵は自分の中にいた! だからそんな意味も込めて『みんな早く逃げろー!』と心の中で叫んでいた。早く逃げてエンドクレジットが流れたらトイレにダッシュしようと思っていた。しかし、体が待ってくれなかった。だめだ、いや、まだいける、しかし……。物語も終盤に差し掛かった時、どこら辺かとか書くといわゆるネタバレになりそうなのでやめておくが、仕方なくトイレに駆け込んだ。負けてしまった。でも負けてよかった。あのまま最後まで見ていたら大惨事だった。そして無事に用を足し、劇場に戻ってみるとエンドクレジットが流れていた。だから俺の『ダンケルク』はあそこまで。こりゃもう一回見に行かないといけないのかな、と思ったが、そうこうしているうちに今度は海の向こうからエイリアンとブレードランナーと猿の惑星がやってくる。まるで名画座の三本立てみたいだけど、全部新作だ。今更、映画を見る前は余計な情報と食べ物は入れてはいけないな、と思い知らされた。 






 まさか、敗走を描いた映画で自分が敗走するとは。

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プロフィール
HN:
馬場卓也
性別:
非公開
職業:
作家
趣味:
怪獣
自己紹介:
作家。一応作家。
CS放送のシナリオ公募で佳作入選。
『SHUFFLE! アンソロジーノベル』
でデビュー。
『School days 君といる、空』で長編デビュー。(ともにJIVE )

『真田十勇姫!』(ソフトバンクGA文庫)
シリーズほか、チョコチョコと。
ラノベ、ゲームシナリオ等々、何でもやりますのでお仕事お願いします。
 怪獣とかチャンバラが好きやねんけど、女の子率高いなあ。


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