作家馬場卓也のおもちゃと怪獣と仕事の三つ巴生活!
男もつらいし、女もつらい。男と女はなおつらい!
てな訳でよろしく
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お馴染京都みなみ会館、超大怪獣EXは園子温監督『ラブ&ピース』でした。え、園監督作品? と思われた人も多いかと思いますが、これもまた立派な怪獣映画。人の望みをかなえる力を持ったカメとロックシンガーとして出世する男の話をファンタジックに、時に辛辣に描く作品、クライマックスは巨大化したカメ、ラブちゃんが主人公に会いに東京の街を闊歩する、大怪獣映画になるのです。今回の上映では特撮を担当した田口清隆監督のメッセージに、ロビーには撮影で使われたラブちゃんの展示という、他ではどこもやらない、『ラブ&ピース5周年スペシャル』のような上映でした。本物ラブちゃんはかわいいけど、生々しい。
そして昨日、再びみなみ会館へ。この間、特に見たいのもなくシネコンにも他の映画館にも行ってませんでした。
昔々、ある国のお話。お妃を失くした王様は世継ぎを作るために王女、つまり自分の娘と結婚しようとする。王女は森の妖精のアイデアで無理難題を押し付けるが、王様はそれを難なくクリア、しまいには国に富をもたらすロバの皮が欲しいといえば、それを……王女はロバの皮をかぶり、下女としてよその国で暮らすことにしましたが、そこへ王子様が通りかかり……。近親婚にロバの皮剥ぎと、エグイ要素もありますが、赤や青で塗られた不思議な国、ばかばかしいほど豪華なセット、そして時折挿入されるミュージカルで、そのエグさも緩和している感じ。王女がかわいいな、と思ったらカトリーヌドヌーブだった。ジャックドゥミ監督は『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』に続いてドヌーブと音楽のルグランと組んだ作品、ということらしい。派手な色彩に中野フラッシュのようなキラキラ、そして周りをうろつく動物たちと、徹底したおとぎ話の映像化は見ていて楽しいです。シンデレラのように、指輪に合う女性を国中から集め、最後にロバ王女の指にぴったり収まりハッピーエンド。結婚式には娘に迫った実父もヘリで駆けつけます。もう、賑やかな歌と映像を散々見せられた後になっては、おとぎ話にヘリが出ようが、王様が妖精と結婚しようがどうでもいいのです。めでたしめでたし、なのです。こっちはマシンガンやロケットランチャーが出てくる時代劇を見慣れてますから(違う)。
豪華絢爛なおとぎ話の次は血なまぐさい韓国映画『鬼手』を。ただのバイオレンス映画ではない、囲碁バイオレンスなのだ。囲碁と暴力というかみ合わなさそうなものが見事に合体! 盤上遊戯と暴力の融合、日本だと『王手』があるけど、『鬼手』はもっと深くてエグイ。
プロ棋士に姉を殺された主人公が、賭け囲碁の男の元で特訓し、復讐を果たす。すべてが囲碁で決着がつく世界、寡黙な主人公に、お調子者のサブキャラという少年漫画のような世界。主人公は山中に住む棋士の元で暮らし、真っ暗闇での目隠し対極等々の特訓を経て闇の囲碁世界に身を投じる。その間、師匠は賭け将棋のイカサマがばれて殺されてるので、その弔い合戦も。霊視で相手を困惑させ、勝つと相手の腕を切断してコレクションする心霊棋士、負けが込むごとに掛け率を倍増する囲碁キチガイとの鉄橋対局、針を得物とする全身焼けただれた棋士との取った石の重みで毒液が噴出される超合金碁盤での毒液噴出溶鉱炉対局等々、怪しげな連中が主人公と戦う。そして対局の合間には激しい格闘戦も。囲碁を学ぶと体も鍛えられるのだ! 最後は居並ぶプロとの100人組手、そして仇敵へ。碁石はスカーフにくるむと強力な打撃兵器にもなるぞ。無茶苦茶である、だからいい。囲碁というストイックなゲームを暴力でコーティングしたらものすごい化学反応が起こった。藤井二冠が対局中相手と激しいカンフーバトルを繰り広げる、そんな感じかもしれない。コロコロのホビー漫画をアダルトに仕上げたテイスト、賭けるのは金ではなく命という極限の状況、ラストのあれは、似たようなシチュエーションがパチンコ漫画であったよ!
今回はフランスと韓国映画のミックスでした。どっちもおもろい、見てよかった、来てよかったと思う2本でした。 PR
ここ最近の見たこと行ったことを。
8月14日京都みなみ会館『山猫は眠らない8暗殺者の終焉』。8本もシリーズあったのか、主役が息子に変わってたのか、でもまだウィリアムデフォー出てるのか! と驚くことばかりのシリーズ最新作。というか、一作目以来の鑑賞。主人公が何者かにはめられるも……という筋書きはさておき、特筆すべきは二本から秋元才加さんが参戦。殺しのプロ、レディデスとして主人公親子を敵に回して大奮戦。ライフルを構えた姿も様になっているし、格闘戦もキレがいい、後ろ蹴りの際、脚の上がり方が綺麗、それに目力がすごい、あの目つきの鋭さで抜擢されたんじゃないかと思うほど。秋元さんにはこれからも海外のアクション映画にどんどん出演してもらいたい。なんだか毎週京都へ通ってる。 8月16日。子供2人と淡路島へ。来年開設予定のゴジラアトラクションのプレイベント、ゴジラミュージアムへ。お盆最終日だというのに道はガラガラでとてもスムーズ、これもコロナの影響。今までさんざんコロナに間接的にひどい目に遭ってきたのだから、たまにはいいことがあってもいい。会場であるニジゲンノモリはクレヨンしんちゃん、ナルトといったアニメのアトラクションが行われており、今回底にゴジラが参加する形になっている。森の中にポツン、と立つ、巨大なゴジラ像、ミュージアムでは『東京SOS』の主役怪獣三匹がお出迎え、その他ジオラマやガレージキットの展示もあり。短い時間ながらとても満足。男三人、やることといえば観光地巡りでも地元の名産を食べたりすることではなく、地元の中古屋巡りだったりするのだ。淡路から洲本を経由して、家路につく。 8月18日。お盆も終わり、子供らは学校へ。一人になったのでTOHOシネマズ泉北で『東映まんがまつり』へ。『映画ふしぎ駄菓子屋銭天堂』『仮面ライダー電王プリティ電王とうじょう!』『りさいくるずー守れ!もくようびは資源ごみの日』『映画おしりたんていテントウムシいせきのなぞ』の4本。ひょっとしたら東映まんがまつりを見るのは79年の『龍の子太郎』以来かもしれない。今回はアニメと実写、それも仮面ライダーの新作が見れることと『銭天堂』のオープニング、エンディングが『バイオレンスボイジャー』の宇治茶監督ということで。もう本編もゲキメーションでやればいいのでは? というぐらい本編の少し怖くて不思議な感覚がぴったりはまっている。『電王』はなんだか久しぶりの気分はしないけど、基本着ぐるみキャラのモモタロスたちがメインなので、いつでも新作が作れることが強み。今回は平成元年に飛んで、お宝をめぐってイカデビル率いるショッカーと戦うといった内容。平成元年ってつい最近かと思ったけど、もう30数年前、あの頃のちびっこはもうお父さんお母さんなのか。ちなみにショッカーは劇中ではお爺さんおばあさん世代の悪の組織らしい。平成元年ということで当時活躍中の仮面ライダーブラックRXネタも。というか、本人もちらりと登場し、おっさんの客を大いに沸かせる。『りさいくるずー』は段ボール工作で作られたアニメーション。ここでも電王ネタが、本編以上に頻出。電王って素手の仮面ライダーシリーズから電王という独立したジャンルになりつつあるな、と思った。『おしりたんてい』今回のメイン番組。謎解きやユーモア、それに下ネタを混ぜ込んだちびっこ大喜び、大人にも楽しい一本。子供の大好きな下ネタを親も容認するぐらいに綺麗に、お上品にまとめているのがうまいなあ。電王のオシリーナと本作で、尻と電王尽くしのまんがまつりでした。 8月20日。長男が『どうぶつ宝島』が見たいというので京都出町座へ。こちらは所用のために先に離脱。猛烈に暑かった。 8月21日。新世界東映『怪猫トルコ風呂』『やさぐれ姉御伝総括リンチ』の東映エログロナンセンスな二本立て。以前から噂の『怪猫』はなぜ化け猫とトルコをドッキングさせた? と思ったけど、これが実にストレートな怪談ものでした。トルコに沈められ、信じていた男に殺された女の情念が、死んだ飼い猫と合体し、化け猫になって復讐する。舞台が舞台だけにポルノな内容ですが、それよりも室田日出男、殿山泰司、山城新伍といったアクの強い男たちの演技に目が行ってしまう。クライマックス、化け猫になったヒロインが登場する際、トルコの泡が空中に吸い上げられ、シャボンになるというシーンが実に幻想的、やけくそのエログロでは終わらないつくり手の自信を見たような気がする。見終わった後、隣にいたおじさんが『しょーもない映画やな』とつぶやいていた。まあ、裸より化け猫とおっさんが目立ちますから。 『やさぐれ姐御伝』は石井輝男監督による女侠客もの。『怪談昇り龍』のようなストレートかつエログロなもの、かと思えば、これは逆にエログロを前面に押し出しつつもストレートな筋立て。オープニングの全裸チャンバラ、クライマックスの全裸大運動会のような大乱戦、しかしここでもアクの強い男たちに目が行ってしまう。ヒロインたち女性陣が美しく強くあるためには、男どもはどこかマンガチックな醜悪さをもって引き立てるしかないのだ。迷宮のようなドヤ街、死体置き場での大乱戦と石井輝男らしさ全開、女性器に麻薬を詰めて密輸する奇天烈なアイデア。時折挟まれる夕陽のバックにしたショットが美しい。 以上、山猫で始まり、化け猫で終わった一週間のあれやこれやでした。 お盆前にまとまった休みが取れた。とはいえ、ありがたいことに書き物仕事が舞い込んできたので、それに取り掛かることにする。これは困難な内容だ、時間かかりそう、と思ったら、コツをつかんでするすると終了。よし、これで映画に行けるぞ‼ と『劇場版ウルトラマンタイガニュージェネクライマックス』へ。
ウルトラマンタイガの実質上の最終回であり、『ウルトラマンギンガ』から始まるニュージェネレーションシリーズの総決算とでもいうべき内容。宿敵トレギアによって父ウルトラマンタロウが悪の手先に! そして邪神魔獣グリムドと再生怪獣軍団! 劇場版らしい華やかさはいつものこと。画面いっぱいにウルトラマンと怪獣が乱戦する絵はいつ見ても楽しい。歴代ウルトラマンがしれっとタイガの居る地球(このシリーズ、毎回別世界の地球の話になってるからややこしい。ウルトラマンの数だけ地球があるんですな)に居るので、自己紹介の手間が省けてスムーズに話が進む。そしてテレビシリーズでも顕著だった、緻密に作りこまれたミニチュアの街並みが、劇場の大画面でも映える。ウルトラマンと人間、善と悪、いろいろ問題を投げかけるけど、一番の見どころは悪の手先になって、体をぐにゃりと曲げて佇むウルトラマンタロウの不気味さではないか、と思うのです。いつも姿勢を正しているヒーローがそれを崩したときの違和感が、尋常ならざるものを感じさせ、得体のしれない恐怖になるのではないか? と思うのです。 公開予定日から5か月を経て、ようやく陽の目を見たグリムドは怪獣というよりも宇宙の妖怪といった雰囲気。同じくおもちゃだけが先に出て『これ誰?』となったウルトラマンレイガは、ニュージェネレーションズが合体した、令和のスーパーウルトラマンタロウ。頭部の形状がグレーとマジンガーっぽくあります。 ヒーロー大乱戦の楽しい映画を見た翌日、あさイチで京都へ。先月から始まった週替わりデジタル上映『仁義なき戦い』シリーズの最終回、『仁義なき戦い完結編』
混沌としていた広島抗争も、頂上作戦と、政治結社への転身で何とか収まったかに見えたものの……。こちらもニュージェネレーションの台頭で戦後闇市世代のヤクザが駆逐されていくお話でした。古いタイプは身を引き、あるいは殺されて新世代へ。しかしそれもまた新たな抗争の火種になっていくのですな。三代目松方弘樹、二代目北大路欣也、二代目伊吹吾郎登場。他の二人が前回と違うキャラづくりをしている中、伊吹吾郎だけはいつもの三枚刈りスタイル、どしんと構えた安定感が留守役を任された組長代理という役柄にマッチ、というか伊吹さんはいつの時代、どんな役でも三枚刈りなのです。血で血を洗う夏フェス、スタンプがもらえる実録ラジオ体操も今回でフィナーレ。 そして、バスに乗って寺町へ。京都のバスは230円均一なのがうれしい。今は営業していない三月書房で行われている小古本まつりへ。そこから河原町をぶらぶらし、中古レコード、古本屋を回って、再びみなみ会館へ。
『新喜劇王』である。チャウ・シンチーである。バカ設定とバカCGで話題になった
『少林サッカー』で有名な、喜劇一筋の監督さんである。今回は売れない女優さんと高慢な大スターのドタバタを描く。とにかくチャウシンチーのギャグはべたというか、泥臭い。しかし、それを突き詰めてるところが嫌いになれないのである。吉本新喜劇の定番の泥臭さというか。相手に突っ込みを入れる隙を見せない。くどいぐらいのギャグを見せつけた後、最後にはちょっといい話へ。テーマ自体が『あきらめない』というべたなものなのだが、夢をあきらめたときにチャンスがやってくるという逆説的な描かれ方。たぶん監督も下積み長かったんじゃないかと思わせる、メイキングでエキストラに接する監督の姿を見て、そう思った。美しきキレイにまとまったもの、それを許さない、頑張っている人たちへのエールのようにも感じられた。といい感じに書いてますが、根っこはいい年した大人がお化け見ておしっこ漏らす喜劇映画ですよ。
そして、短い夏休みが終わり、お盆へ。 『がんばれいわ‼ロボコンウララ―!恋する汁なしタンタンメン‼の巻』『スプリンパンまえにすすもう!』『人体のサバイバル!』のやたらと『!』の多いチビっコ向け三本立て。お目当てはロボコンだったけど、メインは人気学習漫画の『人体のサバイバル!』らしい。なので、いきなりロボコンがトップバッター。困った、『ロボコンが作った汁なしタンタンメンが世界征服を宣言し、他の中華料理が人類に牙をむく』という気が狂ったような内容だった。ロボコン、というより不条理な東映不思議コメディの路線、かつての下町ロボ根性物、とはちょっと毛色が違う。コロナ禍で撮影された少人数小規模の撮影、これがテレビのパイロットなら、他にもぞろぞろロボット仲間がいたのかもしれない、とないものねだりをする。見ていて途中で『誰が何を主張し、行動している』のかがわからなくなってきた。詰まるところ、一番おかしかったのはロビンちゃんか。介護ロボットという設定はよかったけど。目まぐるしくガチャガチャしたロボコンの後に始まった『スプリンパン』、10分ほどのCGアニメだけど『君、誰?』なのである。さも『ご存じスプリンパン』というテイで登場し、不思議な生き物と歌って踊って自己紹介して去っていく。何だったのか? ロボコンの後にあれをやられるとますます脳内整理が追い付かなかくなってきた。君は何者だね、なぜお母さんは普通の主婦っぽい格好なのかね? 聞きたいことは山ほどあるけど、彼女は去っていった。何だったのか、新番組のパイロットだったのか、自主製作映画だったのか? 謎は永遠に謎のままがよいのかもしれない。そしてメインの『人体のサバイバル!』は学習漫画のアニメ化ということで、これも『ご存じもの』の体で登場。でもこっちはきちんとキャラをナレーションとテロップで紹介してくれるので、まだ親切である。ミクロ化して人体の不思議、そしてピンチを切り抜け! なジュニア版『ミクロの決死圏』だった。脳腫瘍を溶かすための超音波発生装置の遠隔操作が故障、手動でロックオンするという定番だけど暑い展開もあり。こちらがこの後シリーズ化されていきそうだけど、ロボコンもまた見たい。そして予告で流れたおしり探偵と仮面ライダー電王も気になるところ。
そして昨日、『仁義なき戦い頂上作戦』へ。京都みなみ会館仁義なきシリーズ上映もこれで4本目。前回、神戸の大組織をバックにした山守VS打本の抗争になりそうなところでお話が続いたが、今回はそこに警察が介入する。戦後18年、激化する抗争にようやく市民が声を上げ、警察が重い腰を上げた! しかし、今回ますます打本組長(加藤武)のヘタレっぷりが顕著になっていく。喧嘩はしたくないけど、組織のトップには立ちたい、敵対組織に秘密を洩らし、さらには金を無心する図々しさ。事業が大事と言い張るので『タクシー屋のおっちゃん』とバカにされるも開き直るふてぶしさ。ひょっとしたら、狸親父の山守組長と並ぶ理想の大人像なのではないか? と錯覚してしまう。みんな広能や武田、あるいは愉快な江田にあこがれるかもしれない、でも結局は小心者だけどビッグでありたい打本やおいしいところどりの山守組長みたいなタイプが最後まで生き残るのではないか? そんな気がする。警察の頂上作戦によって主役の広能が途中退場、残った武田が抗争の後始末に奔走する。結局抗争もトップがパクられ、神戸の大手も手を弾いてしまって収拾がつかなくなる。そしてくすぶるように暴力を発散させる若者たち。監獄で検察官が広能に言う『偉いもんは動かんで、若いもんばかり死んでいく』と。これもまた戦争の縮図であり、ヤクザの姿を描いた戦後史であることもうかがえる。そして野球賭博を仕切る若者(小倉一郎)、ひょろっとした草食系のルックス。およそこのシリーズの世界観に似つかわしくない彼の登場がまた、時代の移り変わりを表しているのかもしれない。一つの時代が終わったような、ラストの小雪舞う刑務所の描写が印象的。でもまだシリーズは続くのです。
ここまで汁なしタンタンメンとかスプリンパンとか広島やくざとか、非現実なものばかり見てきたので、現実的なものを、と思い『はちどり』も見る。
90年代の韓国、一人の女子中学生の姿を奇をてらうことなく淡々と描く。何もない、普通の世界だから、俳優さんも大変だな、と思った。物語もそれほど大きな事件があるわけでもない。主人公ウニの入院も命にかかわることではない。中学生らしく大人はわかってくれない世代。友達と遊んだり、悪さしたり、両親はがみがみ、兄は暴力をふるう、ぎすぎすした関係。でも、一色に食卓を囲む。何度も食事シーンが登場するのが彼らが『家族』である証のようにも見える。浮気? もすりゃ子供にうるさい父親も、暴力的な兄も、ぎりぎりのラインで『家族』であり、それがあるきっかけで爆発するシーンも何度かある。でもウニは、そんな自分をわかってくれる大人、漢語塾の先生に惹かれていく。劇的なパートといえば、その顛末ぐらいで、あとは本当に淡々とした女子中学生の日常が描かれる。ラストのウニの表情がいい。 思えば、自分の娘とウニは同世代だった。そう思うと、どうしても父親目線で見てしまう映画でもあった。
割ときつめの夜勤二連荘を終え、そのまままっすぐ家に帰ればいいものだが、そうもいかない。新作公開日が金曜日に定着している昨今、今のうちに見ておかないと木曜日で上映終了する映画もたくさんある、ということで難波へ。
『ブルース・リー4kリマスター復活祭2020』のラスト『死亡遊戯』を。クライマックスのみを残して、リーさん本人がなくなったためにそっくりさんと過去作品のパッチワークで作られた作品。スルーしてもいいかも、と思ったけど、ここまでくれば全制覇である。それに、そっくりさんパートを我慢(失礼)すればご褒美のようなスーパー本人タイムが待っている、そしてオープニングはこれ以上ないぐらいにかっこいい絵とジョンバリーの曲だ。見ないわけにはいかない。
動きは似せているけど、背中がつるんとしているのとトラックスーツが明るい黄色のそっくりさんもそれなりに頑張っている。あの本人の顔だけ貼り付け合成も4Kで蘇る。鏡やガラスを使った演出も『燃えよドラゴン』のロバート・クローズ監督らしい。でもそっくりさん。そっくりさんが顔を整形&変装し、悪の組織に忍び込む。なら最初から似ても似つかない人でも良かったのでは? なんだかややこしい。トラックスーツ軍団とのバイクアクションを済ませ、ようやく悪の巣窟五重塔へ、待ち構える住み込み格闘家たち。ここでようやくスーパー本人タイム! この瞬間、画面がさらに引き締まった、というとのは大袈裟ですが、それぐらいの気分でした。フィリピノカリ&ヌンチャク、韓国合気道、各階で行われる異種格闘技戦。塔に上るたびに待ち受ける強敵、という図式はこのご様々な媒体で引用されることになる、早すぎたカンフー&RPGの融合、最後に待ち構えるのは黒い巨人、ジャバール。一応空手使いだと思うけど、最後の最後に『ものすごくでかいやつ』を持ってくるセンスの良さ。テクニックよりもビジュアル重視、映画を見てなくても黄色いトラックスーツと青い服着たでかい奴は何となく見たことがある、それぐらいのインパクトを残している。
そして最後にそっくりさんに戻って『ワーックス!』からのラスボスのあっけない死に方、『死亡遊戯愛のテーマ』へ。ああ、この映画作った人はもういないんだな、と思うとしんみりするのです。以前見たビデオ版とも音声が若干違う、これが劇場公開バージョンというやつだったのか。
美しい死亡遊戯を見て帰ろうかと思ったら、続けて『エレファント・マン』も上映とのことで、こちらも見ることに。公開時はホラーみたいな扱いだったけど、ふたを開ければヒューマンドラマ、でもリンチ監督だから、ところどころおぞましくも美しい絵が差し込まれる作品。劇場で見るのはこれが初めて。20世紀初頭、母の体内にいる際に象に踏まれて醜い容姿となった青年を見世物小屋から引き取る医師。その容姿のために本人も周囲もぎこちないながらも、彼が心開くと同時に周りも彼を温かく受け入れる、象人間なんかじゃない、彼は読書好きの人間なのだ。こちらも4K修復版で、むせるような蒸気機関とその機動音、立ち込める排煙、ごみごみしたロンドンの下町がくっきりと見えるし、監督のこだわりのようなものもうかがえる。象人間ジョン・メリックは病院に保護され、やがてその噂を聞き付けた社交界のお歴々が彼と面会を望むようになる。でも、彼らの顔はどこかひきつっている。その様子を見ていたいつもは嫌味な看護婦長がズバリと医師に言う『彼らは友達に自慢したいだけ!』、自分もまたあの見世物師と一緒なのではと悩む医師。善意と悪意は紙一重なのか? 今でも障害者を扱った番組を見るたびに思うことが、この時すでに提示されていた。再び見世物小屋に戻るも、仲間の手助けで脱走。異端の者たちが森の中を行進する姿は幻想的ですらある。ロンドンに戻る途中、些細なことで覆面をはがされ、群衆に囲まれたメリックが叫ぶ『僕は人間だ!』がこの映画のすべて。人間らしく生きる彼の姿を淡々と、時にファンタジックに描いている。
わかっているけど、人間は善意と悪意の狭間で生き続けるんだなぁ、とぼんやりそう思いながら、介護施設で働く自分はどうか? と思ったりもする。うーん、普通。大上段に構えることなく、お互い壊れることなく普通になるしかないな、と薄曇りの空の下、帰路についた。 |
カウンター
プロフィール
HN:
馬場卓也
性別:
非公開
職業:
作家
趣味:
怪獣
自己紹介:
作家。一応作家。
CS放送のシナリオ公募で佳作入選。 『SHUFFLE! アンソロジーノベル』 でデビュー。 『School days 君といる、空』で長編デビュー。(ともにJIVE ) 『真田十勇姫!』(ソフトバンクGA文庫) シリーズほか、チョコチョコと。 ラノベ、ゲームシナリオ等々、何でもやりますのでお仕事お願いします。 怪獣とかチャンバラが好きやねんけど、女の子率高いなあ。
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