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 作家馬場卓也のおもちゃと怪獣と仕事の三つ巴生活!  男もつらいし、女もつらい。男と女はなおつらい! てな訳でよろしく
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・いまだ頭の中をリアベ号とか轟天号が飛び交ってふわふわしているというのに、10月のみなみ会館『大怪獣大特撮大全集』は開催日が早い! いつもは月末なのだが、今回は10月11、12と、前回から二週間しか空いてない。今回のプログラムは『獣人雪男』『ガス人間第一号』の、巨大怪獣の出ない怪人、変身人間の二本立て。

 スケジュール的に大丈夫やろうか? と思ったけど、何とかなったので、いつものように空埜大先生と第二京阪を飛ばしつつ京都へ。道でもいいが、この日はやたらとパトカーを見かけた。コンビニや路上で、事故とか取締りとかで停車するパトカーと警官。今日は何かあったのか? 台風も近づいているせいか、京都の空は赤く燃えてござる。



 みなみ会館に着くとごった返す人たち。これはやはり、幻の映画と言われ、ソフト化がままならない『獣人雪男』のせいだろうか。周りが封印作品だ、幻だ、とはやし立てるおかげでかえって世に出にくくなっているのでは? と思うのだが。


 『獣人雪男』が学生時代以来久しぶりの鑑賞。あの時は眠くて仕方なかった。日本アルプスのその奥に潜む雪男と人間を描く、怪獣映画というより未確認動物(UMA)映画。『ゴジラ』と同じく香山滋が原作を手がけているので、滅びゆくイニシエの種族への愛情がたっぷりと詰まっており、映画でもそれが色濃く反映されている。


 俗世間から隔離された土地で、山の民から主と崇められ共存生活を送っていた雪男親子。それが文明人に土足で住処を荒らされ、子供を殺されたために見境なく怒り狂う。
 野生動物を怒らせる一番手っ取り早い方法は子供を殺すか捕えることだ。その役を担うのは決まって悪徳興行師。まず、映画に出てくる興行師でいい人を見かけたことはほとんどない。どいつも欲深く、残酷だ。いけない、ガッパ怒る。



 本多監督のおなじみ、ジラせにジラせて怪物の姿を見せない演出は健在だが、雪男は等身大のためか、じらせまくったうえ、ひょっこり顔を見せる。また、ゴリラというよりもニホンザルのような柔和な表情で頭頂部が円い造形のため、シルエットで見るとオッサンに見えてしまうのが難点。それでも大胆な合成やコマ撮りなど巨大怪獣とはまた違ったアプローチの特撮で暴れる雪男は白黒画面のせいで生々しく見える。



  
 物語は行方不明になった仲間を探す主人公たちに、徐々にその姿が明らかになる雪男を並行して描く。山の民の一人、年ごろの娘チカは都会から来た主人公に惚れてしまい、そのために仲間を、雪男を売り飛ばすはめになる。責任を感じたチカはラスト、短刀をもって雪男に立ち向う。この時代で怪物と戦う女性というのは珍しいケースだと思うが、まず、怪物を封じ込めるのは怪物に近い立場の人間という『ゴジラ』に続く香山滋のセオリー(『ゴジラの逆襲』は? と言われると弱い)が生きている。


 
 毒キノコを食べたために仲間が死に絶えた雪男は、種の保存のために都会から来た娘をさらう。山娘のチカは近すぎて手を出さなかったのか? バカヤロ、本当にいいのは遠くの美人よりも近くの気のいい女なのに。



 この映画が封印されている理由は山の民の描写だろう。前時代的な生活ぶりに劇中では全く語られていないが、おそらく近親婚を繰り返しているに違いない。そ思わせる村人がちらほら見える。さらに、そこに雪男の血が混じれば……恐ろしくドロドロした集落になるんじゃないか? と思う。


 これを『ゴジラの逆襲』の後に持ってきた東宝は巨大怪獣以外でも特撮を駆使したジャンルを模索していたように思える。そして生まれた等身大怪人路線はひっそりと続くことになり次の『ガス人間第一号』につながっていく。


 『ガス人間』は特撮怪人映画としても、一級のメロドラマとしても傑作、という声が高い作品。今回大スクリーンで非常に状態のいいプリントで鑑賞するにあたり、その思いが強くなった。


 徐々に明らかになる謎の銀行強盗の正体、そこに絡む日本舞踊の師匠の存在。サスペンスから始まり、SF色を匂わせ、最後に悲恋ものとして締めくくる。これは特撮映画というより、一般の映画としても傑作である。


 まず『ガス人間』という存在に『日本舞踊』という相容れないものを組み合わせた脚本の勝利である。そして演出は本多監督のおなじみ焦らせ演出でガス人間の正体を少しずつ、丁寧に描いていく。いつになく手堅く見える演出は、お馴染み怪獣映画の常連俳優を極力抑えたキャスティングと主人公である三枚目の刑事役の三橋達也のおかげだろうか。そして日本舞踊の師匠を演じる八千草薫の『この世の人とは思えない』美しさと佇まい。



 ベタな脚本なら三橋達也が八千草薫に惚れてしまうところだが、人ならざる雰囲気の八千草には、もはや人ではないガス人間がよりそう。三橋達也には都会的な婦人記者が。現代っ子な婦人記者と古風な日本舞踊の師匠、この対比がまたお互いのキャラクター像を深く掘り下げている。



 人を捨てたガス人間と、俗世から離れ芸道一筋の藤千代、行きどころのない二人の末路は悲劇だったのだろうか。



 ガス人間が留置所の格子をするりと抜けるシーンは『ターミネーター2』、パイロット志願の青年がスカウトされて超人に改造されるのは『キャプテンアメリカ』を思わせる。単なる偶然だと思うが、東宝が早すぎたのか。



 留置所でにやりと微笑むガス人間、土屋嘉男が一瞬、ブルースリーの物真似をする竹中直人に見えるが、それは本筋とは関係ないので。




今回の二本はいずれも人と人、人とそうでないものの悲恋を描いた2本で、秋にはピッタリの組み合わせだったっと思う。
次回のみなみ会館は11月の1、3とこれまた短い間隔での開催、果たしていけるやろうか。
 

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プロフィール
HN:
馬場卓也
性別:
非公開
職業:
作家
趣味:
怪獣
自己紹介:
作家。一応作家。
CS放送のシナリオ公募で佳作入選。
『SHUFFLE! アンソロジーノベル』
でデビュー。
『School days 君といる、空』で長編デビュー。(ともにJIVE )

『真田十勇姫!』(ソフトバンクGA文庫)
シリーズほか、チョコチョコと。
ラノベ、ゲームシナリオ等々、何でもやりますのでお仕事お願いします。
 怪獣とかチャンバラが好きやねんけど、女の子率高いなあ。


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